2020 Fiscal Year Research-status Report
脂質メディエーターによる心筋細胞死制御機構の解明と心不全創薬への応用
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20K08491
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
種池 学 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30609756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 宏達 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30865746)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心不全 / 細胞死 / 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全は我が国における主要な死因の一つであるが、予後を劇的に改善させる治療法は確立されておらず、新たな治療標的となる分子機構の解明や新規治療薬の開発が急務である。これまで、心不全における炎症の役割が明らかとなってきているが、炎症に引き続く具体的な心筋組織傷害のメカニズムについては未だ明らかとなっていない。そこで、本研究は脂質代謝と炎症が細胞死、特にネクローシスを介して心不全に関連しているのではないか、という仮説を立てた。この仮説を検証するため、脂質代謝、炎症惹起および細胞死の分子機構に含まれ、Caspase非依存性非アポトーシス型細胞死に関連していることが報告されているiPLA2βに着目した。本研究では、iPLA2βが心不全を発症進展させるメカニズムについて検討することで、脂質代謝異常を起源とする炎症および心筋細胞死のメカニズムを明らかにすることを目的とし、さらには、その結果を基に新規心不全治療薬の開発への応用を目指す。 初年度は、初代単離ラット新生児心筋細胞を用いて、サイトカイン産生および細胞死について評価した。その結果、いずれもsiRNAを用いたiPLA2βのノックダウンにより変化が見られた。また、iPLA2βの心筋細胞特異的ノックアウトマウスを用いて、圧負荷誘導性心不全モデルを作製したところ、対照群とノックアウト群で明らかな心臓表現型の違いを認め、心臓組織中の炎症や細胞死の程度にも有意な差を認めた。細胞死のメカニズムについて解析を行い、組織学的にも生化学的にもネクローシスの関与が強く示唆された。 表現型の違いを示す原因となる分子メカニズムの解明を進めるため、前述の心臓サンプルにおけるリピドームの変動をリピドミクスの手法を用いて網羅的に解析し、責任分子の候補が得られたため、さらなる研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPLA2βをノックダウンした初代単離ラット新生児心筋細胞を用いた実験、およびiPLA2βの心筋細胞特異的ノックアウトマウスを用いた心不全病態モデルにおいて、表現型の解析が終了し、明らかな表現型の違いを認めた。iPLA2βが心筋細胞死を介して心不全発症進展メカニズムへ関与することを強く示唆しており、当初の仮説を支持する非常に意義深い結果を得ることに成功した。さらに、リピドミクスの手法を用いた網羅的解析により、責任分子の候補が得られた。以上より、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
リピドミクス解析によって得られた責任候補分子について、in vitroおよびin vivoの実験系を用いて詳細に検討する。また、その分子が関わるシグナルに介入するために、阻害薬などを用いて表現型の確認を行う。
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Research Products
(1 results)