2022 Fiscal Year Annual Research Report
心筋再生医療にむけたErbB受容体シグナル経路の解明
Project/Area Number |
20K08502
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
平井 希俊 関西医科大学, 医学部, 講師 (60422929)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ErbB受容体 / 細胞周期活性 / 心筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、報告者が独自に作製した心筋細胞特異的ErbB2過剰発現マウス、および心筋細胞特異的ErbB4過剰発現マウスを解析し、その分子機能の本質に迫った。従来、ErbB2/4受容体はヘテロダイマーを構築し、ニューレグリンという共通のリガンドを介して、同じシグナル経路を活性化するとされている。ところが、我々の作製したマウスの解析の結果、ErbB2では心機能が亢進し、ErbB4では心機能が極度に低下するという、まったく異なる表現型を呈した。これまでの研究で、ErbB2の過剰発現では、心筋細胞の細胞周期活性が亢進し、心筋細胞が増えることにより心室壁が厚くなると考えられている。 一般的に、心臓には心筋細胞をはじめ、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞など多くの細胞種があるため、心筋細胞特異的な細胞周期の可視化は難しい。そのため、ErbB2もしくはErbB4を過剰発現している細胞を同定するために2A配列を介して膜結合型EGFPもしくはヒストン融合mCherryをそれぞれ発現させ、細胞周期活性を詳細に比較検討した。その結果、従来の考えとは異なり、ErbB2の過剰発現は心筋細胞の細胞周期活性を亢進することはなく、心筋細胞以外の細胞の細胞周期活性を亢進するということが判明した。そしてErbB2の過剰発現により心エコー上の駆出率は上昇するが、実際の血行動態を測定すると、弛緩能が極端に低下しており、HFpEFに非常に似た病態を呈するということがわかった。以上より、ErbBシグナル経路の活性化による心筋再生治療への応用には、ErbBのシグナル経路全体の活性化ではなく、より限局したシグナルの活性化が必要であることが示唆された。
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