2021 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸組成バランスの不均衡と肝臓―肺連関による肺気腫進展の機序解明と新規治療戦略
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20K08512
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
横山 知行 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70312890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 敏孝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00436297)
須永 浩章 足利大学, 工学部, 講師 (10760077)
松井 弘樹 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (20431710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺気腫 / 遊離脂肪酸 / Elovl6 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺胞上皮細胞の脂肪酸組成を制御するElongation of long chain fatty acid member 6 (Elovl6)の発現と肺気腫との関係を肝細胞特異的Elovl6遺伝子欠損マウスを用いて検討した。 まず、全身Elovl6欠損マウスに喫煙曝露による肺気腫モデルを作製したところ、野生型マウスと比較して肺気腫病変が著明に増悪することを見出した。さらに、肝細胞特異的Elovl6欠損マウス(Elovl6 LKOマウス)を作製し、肺気腫病変の変化や喫煙曝露による影響を検討した。その結果、全身Elovl6欠損マウスと同様に肺気腫病変が認められ、6ヶ月間の喫煙曝露により増悪傾向を示した。 また、RNAシークエンスによる遺伝子発現の網羅的スクリーニングを行った結果、Elovl6欠損マウスでは肺気腫の病態に関連する特定のタンパクAの血中濃度の低下、さらにタンパクAの主要な産生臓器である肝臓での発現が著明に低下していることを見出した。そこで、肝細胞特異的Elovl6欠損マウスに喫煙曝露による肺気腫モデルの作成を行ったところ、コントロールマウスと比較して肺気腫病変の増悪、タンパクAの血中濃度の低下、肝臓でのタンパクAの発現低下を認めた。また、培養マウス肝細胞(AML12)を用いて、Elovl6をノックダウンさせたところ、同様にタンパクAの発現低下を認めた。そこで、肝臓へのタンパクAの発現増加により、肺気腫病変をレスキュー出来るかどうかを検証するため、アルブミンプロモーター下にタンパクAの発現ベクターを組み込んだアデノ随伴ウイルス(AAV)を作成し、全身Elovl6欠損マウス、肝細胞特異的Elovl6欠損マウスへの投与実験を実施している。現在、適切なAAVの投与濃度を検討している段階で、今後、喫煙モデルによる肺気腫病変の病態の程度を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生型マウスとElovl6欠損マウスに喫煙曝露し、RNAシークエンスにより、遺伝子発現の網羅的スクリーニングを行い、病態に重要な遺伝子群を検討する。野生型マウスに対してElovl6欠損マウスで発現が著明に増加している上位40位までの遺伝子で、いくつかの遺伝子が、非喫煙、喫煙曝露のいずれにおいても、Elovl6欠損マウスで著明に発現が増加していることが明らかになった。これらの遺伝子に関連して、Elovl6欠損マウスでは肺気腫の病態に関連する特定のタンパクAの血中濃度の低下、さらにタンパクAの主要な産生臓器である肝臓での発現が著明に低下していることを見出した。タンパクAは主に肝臓で産生されるため、肺でのタンパクAの発現と病態との関連を明らかにするためにはElovl6の発現をII型肺胞上皮および肝臓特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスの作成が欠かせない。ドキシサイクリン誘導型のⅡ型肺胞上皮細胞特異的Elovl6 欠損マウス作製し、現在、繁殖中である。コンディショナルノックマウスの作製にあたって、自然受精が成功せず、人工授精による繁殖を開始した。また、肝臓特異的Elovl6欠損マウスを筑波大学より譲渡して頂き、本学で繁殖を開始した。さらに喫煙モデルマウスの作製に6ヶ月を要する。また、新型コロナウィルス感染のため、2020年、2021年と実験の実施が制限されていた。従って、本研究の主要課題である遺伝子改変動物による実験が当初の計画より遅延しているため、研究費の使用も一部、令和4年度に繰り越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年、2021年から継続して、II型肺胞上皮特異的にElovl6発現を欠損したコンディショナルノックアウトマウスおよび肝臓特異的Elovl6欠損マウスを用いて、肝臓でのタンパクA発現、産生とElovl6発現および肺気腫進展への関与を明らかにする。 今後は肝臓特異的Elovl6欠損マウスと、Ⅱ型肺胞細胞特異的Elovl6欠損マウスで、肺気腫病変に差が認められるかを検討する必要があると考える。そこで、肝臓特異的Elovl6欠損マウスと、Ⅱ型肺胞細胞特異的Elovl6欠損マウスに喫煙曝露を施し、タンパクA濃度,好中球エラスターゼ活性と病変の重症度との関連を解析する。次に、タンパクAの発現や活性を規定する責任脂質の同定を行うために、Elovl6欠損マウスの肝臓から脂質を抽出し、リピドミクス解析を行う。考えられる責任脂質を培養肝細胞に添加し、タンパクAの発現や、培養上清中のタンパクA濃度を測定するとともに、発現制御メカニズムを解析する。
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Causes of Carryover |
タンパクAは主に肝臓で産生されるため、肺での遺伝子の発現と病態との関連を明らかにするためにはElovl6の発現をII型肺胞上皮および肝臓特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスの作成が欠かせない。ドキシサイクリン誘導型のⅡ型肺胞上皮細胞特異的Elovl6 欠損マウス作製し、現在、繁殖中である。コンディショナルノックマウスの作製にあたって、自然受精が成功せず、人工授精による繁殖を開始した。また、肝臓特異的Elovl6欠損マウスを筑波大学より譲渡して頂き、本学で繁殖を開始した。さらに喫煙モデルマウスの作製に6ヶ月を要するが、昨年は新型コロナウィルス感染により、実験を行えない 期間があり、計画通りに実験が遂行できなかった。従って、本研究の主要課題である遺伝子改変動物による実験が当初の計画より遅延しているため、研究費の使用も一部、令和4年度に繰り越しとなっている。
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[Journal Article] FABP5 Is a Sensitive Marker for Lipid-Rich Macrophages in the Luminal Side of Atherosclerotic Lesions2021
Author(s)
Umbarawan, Y. Enoura, A. Ogura, H. Sato, T. Horikawa, M. Ishii, T. Sunaga, H. Matsui, H.Yokoyama, T. Kawakami, R. Maeno, T. Setou, M. Kurabayashi, M. Iso, T.
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Journal Title
Int Heart J
Volume: 62
Pages: 666-676
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research