2020 Fiscal Year Research-status Report
重症呼吸器感染症の免疫動態解明とIL-7を含めた新規免疫療法ストラテジーの構築
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20K08517
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
進藤 有一郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (60608884)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感染免疫 / 重症呼吸器感染症 / 重症肺炎 / COVID-19 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症肺炎患者を主たる対象として血液サンプルを採取し免疫応答解析を進めている。先行研究(Shindo, et al. Lancet infect Dis 2015)から得た知見をもとに、入院時に臨床パラメータから死亡低リスク群、死亡高リスク群に分類し、その後それぞれの群の患者の血液を血漿と血球に分け、血漿は主にサイトカイン測定のためのELISA、血球はマルチカラーフローサイトメトリーによる解析を進めている。約10名の患者検体を用いたプレリミナリーな検討では、死亡低リスク群に比べて、死亡高リスク群の患者では、リンパ球数が少ない傾向にあった。リンパ球系に主眼を置いて解析しているが、死亡高リスク群の患者ではCD8+ T細胞では活性化マーカーのCD127+細胞の割合が低下傾向にあり、CD4+ T細胞ではPD-1の発現割合が高かった。また、死亡高リスク群の患者のCD4+ T細胞では死亡低リスク群に比べてIFN-gの産生増強があるものの、IL-2産生能は減弱していた。これらの結果から死亡高リスク群患者から得られるT細胞疲弊からくる機能低下が示唆された。 次年度は肺炎患者をCOVID-19、non-COVID-19群に分けての比較検討も行い新規免疫療法治療ストラテジー構築に向けた解析を行う予定である。すでに患者検体収集は進めており、経時的にサンプリングを行うことで、免疫応答がどのように変化していくか、とくにT細胞表面の共抑制分子の発現や、サイトカイン産生をはじめとする機能の変化に着目する。またCOVID-19では制御性T細胞の低下遷延による免疫応答の調節が破綻していることも示唆されるため、T細胞の分化能、制御性T細胞機能解析も進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・免疫応答解析を進めるマルチカラーフローサイトメトリーなどの実験方法は確立している。 ・倫理審査でも承認は得られており、患者からの検体収集はすでに開始している。 ・市中発症の重症肺炎、外科術後肺炎における好中球のプロファイルが異なり治療ターゲットになり得る可能性があるため、その病態解明に向けた実験も進めている。 ・COVID-19、non-COVID-19群に分けての比較検討ができる準備も整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・患者サンプルを使用した研究: 我々の過去の研究結果(Shindo, et al. Lancet Infect Dis 2015)に基づいて、適切な抗菌治療を行っても死亡リスクが高い患者群を研究にエントリーし、これらの患者のサンプルを用い、リンパ球、好中球を中心とした免疫細胞の細胞死の状態評価、細胞増殖、サイトカイン分泌能などの機能解析をマルチカラーフローサイトメトリー法を用いて行い、さらにCyTOFを用いた解析も行い免疫応答の詳細な解析を行う。また血漿中の炎症性、抗炎症性サイトカイン分泌に関するELISAを用いた解析を継続して行う。 COVID-19、non-COVID-19群に分けての比較検討を行い、この2群での免疫応答の違いを解明することで、よりよい肺炎免疫治療戦略を構築することを目的に研究を進める方針である。
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Causes of Carryover |
当該年度は新型コロナウイルス感染症の影響で研究を推進できない時期があったために一部の予算を次年度に使用することにしたが、現在は研究推進できる状況を整えたので、現在の計画を加速させる形で研究を進めていく予定である。
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Research Products
(9 results)