2020 Fiscal Year Research-status Report
金属による職業性喘息の新たな発症機序に関する探索的研究
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20K08538
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
門脇 麻衣子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (20401979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 気道平滑筋細胞 / インターロイキン6 / デキサメサゾン / ニッケル(Ni) / コバルト(Co) |
Outline of Annual Research Achievements |
金属によるヒト気道平滑筋細胞のIL-6産生とステロイドの抑制効果についての研究を行っている。その背景には、気道の慢性炎症を病態とする喘息のうち、金属を取り扱う業務に従事している人に見られる職業性喘息があるが、その発症機序を探索することにより、職業性喘息のみならずその他の気管支喘息患者の治療の一助になる知見を得ることを目的としている。 気管支平滑筋細胞を培養し、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛、クロムの低濃度~高濃度で刺激をすることにより、気管支平滑筋細胞からのIL-6の産生を測定した。IL-6は難治性喘息に関与する気道炎症を惹起させる因子として選択した。その結果、0.3mMの濃度でニッケル、コバルトで有意にIL-6の産生が亢進したことを発見した。このIL-6の産生亢進は、IL-6産生のどの段階から起こっているか調べるために、ニッケル、コバルトの刺激あり/なしでのIL-6のmRNAをリアルタイムRT-PCRで測定したところ、ニッケル、コバルトの刺激でIL-6 mRNAの発現が亢進していたので、IL-6の転写レベルで亢進していることが分かった。さらに、ニッケル、コバルトの刺激を細胞のどこで感知するか調べるために、酸を感知するレセプターであるOGR1を、OGR1に特異的なsiRNAを細胞にトランスフェクションさせ、OGR1ノックダウン細胞を作成した。このOGR1ノックダウン細胞にニッケル、コバルト刺激するとIL-6の産生が抑制されたため、ニッケル、コバルトの刺激の感知にはOGR1が関与していることが明らかになった。また、一般に難治性喘息ではステロイドの効果は乏しいとされるが、ステロイド(デキサメサゾン)を投与すると、IL-6産生亢進を抑制した。 これらこれまでに得た知見を、令和2年(2021年)9月21日から行われた第60回日本呼吸器学会学術集会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養環境がカビで汚染され、清掃などを繰り返しているが、再度カビのコンタミネーションがあり、培養途中で細胞の廃棄を余儀なくされている。 対処方法として、培養場所を変更し実施している。 また、細胞の生育状況が悪く、購入先を変更することも考えているが、変更した場合、最適な培養方法を再検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
実細胞のLotを変えたりして実験を繰り返して行い、再現性があるか確認する。 気道平滑筋細胞は、様々な種類のサイトカインやケモカインなどの炎症調節因子を産生することが知られているが、気道平滑筋細胞から産生される他の炎症調節因子についても、同様の現象が起こるか調べたい。 これまで、ステロイド作用の直接機序は明らかにされていないが、ステロイドがIL-6のmRNAへの転写のどこの部分を抑制するのかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
培養環境汚染によるコンタミネーションで、培養細胞の廃棄も余儀なくされ、試薬などの研究費が次年度使用額となった。次年度も、気道平滑筋細胞細胞、細胞培養、試薬などの研究費で使用予定である。
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