2020 Fiscal Year Research-status Report
GDF-15 as a novel biomarker and a therapeutic target for idiopathic pulmonary fibrosis
Project/Area Number |
20K08541
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大下 慎一郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (50508132)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 間質性肺炎 / 急性増悪 / 急性呼吸不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(IPF)は,有効な治療法が十分に確立しておらず,平均生存期間は3~5年と極めて予後不良な呼吸器疾患であり,急速に進行して数日~数週間で死亡に至ること(急性増悪)もある.我々は,上記課題解決のためIPF患者肺を用いたマイクロアレイ解析を行い,健常肺に比べてmRNA発現レベルが亢進している分子を同定してきた. 本研究の目的は,上記の候補分子の中から増殖分化因子15(growth differentiation factor-15: GDF-15)に着目し,①IPF病態形成におけるGDF-15の機能を解明すること,そして,②GDF-15を阻害することによって肺線維化を抑制しうることを明らかにし,IPFの新規治療標的分子としての有用性を示すことである. まず,2020年度は以下の研究について取り組んだ.1) IPF患者の血清・肺組織を用いてGDF-15のタンパク発現を評価し(ELISA,免疫染色),IPFの診断マーカー・予後予測マーカーとしての有用性を評価する.2) 正常ヒト肺線維芽細胞株・IPF患者由来の肺線維芽細胞株を用いて,GDF-15が線維芽細胞の増殖促進・アポトーシス抑制・走化性促進に関与していることを検証する. 1)では,GDF-15高値のIPF患者は,急性増悪を発症しやすく,予後不良である傾向を見出した.肺組織を用いた免疫染色では,肺胞マクロファージにGDF-15の発現が認められた.また,患者ゲノムを用いたSNP解析では,急性増悪の発症リスクとなりうるSNPを複数同定した. 2)では,GDF-15存在下で培養した線維芽細胞が,増殖促進・アポトーシス抑制を来すことを検証している段階である.また,来年度のマウスを用いた実験に向けて,現在ブレオマイシン・モデル(肺線維症モデル)を安定して作成する準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト,細胞,マウス研究とも,概ね計画どおりに進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
特発性肺線維症急性増悪の発症リスク因子として,2020年度に同定できたSNPについて,それぞれのSNPがコードしているタンパクとその機能を検証する予定である. また,線維芽細胞の増殖・アポトーシスを誘導し,GDF-15が増殖・アポトーシスに与える効果を検証する予定である. さらに,マウス・ブレオマイシンモデルを用いて,マウス肺の線維化にGDF-15が与える効果を検証する予定である.
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Causes of Carryover |
実験に使用する試薬が,当初想定していた品よりも安価で購入できたため,予算に残金が発生した.しかし,線維芽細胞を用いた実験において,試薬の反応濃度・反応時間設定に多くの予備検討を要しており,このステップで予定よりも多くの試薬を必要とする可能性がある.このため,最終的には予算残額が相殺されるものと予測される.
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