2020 Fiscal Year Research-status Report
機械感受性チャネルPiezo1とメカノセンサーを標的とした呼吸器疾患の病態解明
Project/Area Number |
20K08554
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 理 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60378073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40252233)
佐藤 光夫 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (70467281)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メカニカルストレス / メカノバイオロジー / Piezo1 / ストレッチ / 喘息 / 肺線維症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレッチ、圧縮、ずり応力、基質硬度などの機械的刺激(メカニカルストレス)は、呼吸器の発達、生理機能と恒常性の維持に必要不可欠である。一方で過剰なストレッチや圧縮負荷、基質硬化などのメカニカルストレスは、気管支喘息、COPD、肺線維症、人工呼吸器関連肺損傷、肺癌を含む多くの呼吸器疾患の病態機序に関わる因子として注目されている。しかしながら、呼吸器系接着細胞におけるメカニカルストレスを感知するメカノセンサーは十分解明されていない。 機械感受性Ca2+チャネルとして発見されたPiezo1 (Coste B, et al., Science 2010)に着目し、培養ヒト気道平滑筋細胞および培養ヒト肺線維芽細胞を用いて検討した。 気道平滑筋細胞および肺線維芽細胞のいずれにもPiezo1のmRNA発現が確かめられた。肺線維芽細胞に関しては、Piezo1に対するsiRNAの導入により、Piezo1 mRNAの発現がほぼ完全に抑制されることが確かめられた。 研究代表者らは、いずれの細胞も伸展刺激に応答して細胞内へのCa2+流入や細胞外へのATP放出を来すことを報告している(Ito S, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 2008, Takahara N, et al., Am J Respir Cell Mol Biol 2008, Murata N, et al., Biochem Biophys Res Commun 2014, Takahashi K, et al., Respir Physiol Neurobiol 2017)。これらの細胞応答におけるPiezo1の役割について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度であったが、新型コロナウイルス流行に伴い、大きく影響を受けた。 2020年4月1日呼吸器・アレルギー内科主任教授に就任して以降、大学病院における診療担当責任者に任命された。 そのため、新型コロナウイルス対策に関する内容が業務の大部分を占めることとなり、研究業務に支障をきたした。 また、教室員の業務も新型コロナウイルス診療の負担増加に伴い研究を行う時間に費やすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Piezo1はメカニカルストレスによって制御される細胞応答に関する分子(メカノセンサー)であり、その呼吸器系細胞および呼吸器疾患との関連を追究することが研究目的である。ヒト気道平滑筋細胞ならびにヒト肺線維芽細胞におけるPiezo1発現については、既に実験により確認できている。 細胞機能に関しては、ヒト気道平滑筋細胞およびヒト肺線維芽細胞におけるメカニカルストレスに対する細胞応答および細胞骨格変化に関して、Piezo1の役割を解明する。まず第一に、Piezo1が気道平滑筋細胞と肺線維芽細胞のメカニカルストレス感受性陽イオンチャネル(mechano-sensitive cation channel)として機能するかどうかを特定する。 将来的には、喘息における気道収縮反応と気道壁肥厚、肺線維症における肺線維芽細胞の活性化など、呼吸器疾患の病態におけるPiezo1の役割について解明することを目標とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行に伴い、研究の遂行に支障が生じたため、2020年度の使用額が予定より少なかった。
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