2020 Fiscal Year Research-status Report
肺マイクロバイオーム多様性喪失と肺サーファクタント蛋白質の免疫機構
Project/Area Number |
20K08570
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
黒沼 幸治 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (40563250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 充史 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00768939)
千葉 弘文 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (40347175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺サーファクタント蛋白質 / 肺内微生物叢 / マイクロバイオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
肺内に豊富に存在する肺サーファクタント蛋白質は、様々な細菌と結合し下気道の自然免疫・感染防御の役割を担っている。マイクロバイオーム解析の進歩により、肺における微生物叢のホメオスタシス変化と様々な疾患との関連に注目が集まっている。高齢化に伴い繰り返す感染や慢性的な肺損傷による肺サーファクタント蛋白質の喪失は肺内微生物叢環境に異常をもたらすと考えられる。 肺サーファクタント蛋白質のうちSP-AとSP-Dは様々な細菌、真菌の菌体成分に結合し、オプソニン効果やToll様受容体を介した炎症制御、肺胞マクロファージの活性化などの働きがあり、炎症を制御する。申請者らはこれまで、SP-AとSP-Dが肺炎球菌感染に対し、抗炎症作用と抗菌活性を有することを報告している。肺サーファクタント蛋白質異常による免疫低下や肺マイクロバイオーム変化は呼吸器慢性疾患とも密接に関係する可能性がある。申請者らが報告した特発性肺線維症における肺マイクロバイオームのDysbiosisは疾患予後とも密接に関連している。特に高齢者の呼吸器感染症やCOPDや肺線維症を含めた喫煙関連疾患に関しては本研究の成果が新たな展開をもたらす可能性を秘める。 本研究では肺サーファクタント蛋白質遺伝子欠損マウス肺のマイクロバイオーム解析により微生物叢の変化を明らかにし、網羅的な細菌探索から肺サーファクタント蛋白質と結合し免疫作用を及ぼす微生物を特定する。肺サーファクタント蛋白質がin vivoで作用を及ぼしている細菌を明らかにすると共に細菌叢変化を正常化する方法の開発を模索する。 初年度の件等としてマウスのBAL液のマイクロバイオームを検討したところ、25週齢のSP-A欠損マウスで多様性喪失(Dysbiosis)がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の流行により臨床業務に負荷がかかっており、基礎研究にかける時間が制限されている。また、移動が制限されており、学会参加も難しい状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロバイオーム解析に用いたBAL検体を同様にSP-A,SP-Dと共培養し、フローサイトメトリーを用いてSP-A,SP-Dへ細菌の結合性を野生型および遺伝子欠損マウスで比較する。さらにSP-A,SP-D欠損マウスで増加している細菌がこれまでに直接的な免疫作用が明らかになっている細菌と異なる場合には同菌とリコンビナントSP-A,SP-Dとの免疫作用機序を調べる。さらに自然免疫機構へのSP-A,SP-D の関与を調べ、Toll様受容体との相互作用、肺胞マクロファージによる炎症性サイトカイン制御、オプソニン効果や貪食能などについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により研究がおくれたことや国際学会がWeb開催となったことより、次年度に繰り越す。 次年度についてはマウスモデルを用いて予定していた研究を進めると共に、COVID-19の流行状況にもよるが、国内外の学会に参加し発表や情報交換を行う予定である。
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Research Products
(7 results)