2021 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺癌術後再発における腫瘍微小環境と薬剤の有効性に関する検討
Project/Area Number |
20K08572
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
渡辺 徹也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40735122)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 肺癌 / 進行非小細胞肺癌 / PD-L1 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 腫瘍免疫微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行非小細胞肺癌の薬物治療としてPD-1/PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害薬が中心的な役割を担ってきており、その適応決定にはコンパニオン診断として腫瘍上のPD-L1タンパクの発現量に基づいて患者選択を行っている。 術後再発症例は進行期症例と同様に扱われることが多いが、術後再発症例に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は不明確である。また、術後再発症例に同薬剤の使用を考慮する際、PD-L1発現測定は手術検体を用いることがほとんどであるが、手術時と再発時のPD-L1発現が同一であるかどうかは不明である。 本研究課題では、薬剤投与直前のPD-L1発現を評価している進行期症例と、アーカイブ検体でPD-L1発現を評価している術後再発症例とで、免疫チェックポイント阻害薬の有効性に違いがあるのか検討する。さらに、その効果の異同の根拠を考察するべく、根治的切除術を受けた非小細胞肺癌患者で再発時に再発腫瘍検体が得られている症例を対象に、手術時と再発時の腫瘍検体より免疫染色を用いてPD-L1発現や腫瘍浸潤CD8・FOXP3陽性リンパ球などの腫瘍免疫微小環境(tumor microenvironment:TME)を比較測定し、再発時にTMEがどのように変化する傾向にあるのかを解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪市立大学医学部附属病院で、2017年1月~2020年12月までに1次化学療法として抗PD-1抗体単剤を投与された進行期非小細胞肺癌症例または術後再発症例はそれぞれ45例と15例であった(コホート1)。これらの症例を対象とし、腫瘍検体より免疫染色にてTME(PD-L1、CD8、CD4、FOXP3)の測定を行った。このうち進行期症例を対象とし、抗PD-1抗体の奏効を予測するカットオフ値を求めたところ、PD-L1高発現ならびにCD8強陽性のTMEが最も奏効割合が高くなることを見出した。本カットオフ値に基づいたTME毎に、術後再発症例を対象として抗PD-1抗体の奏効割合を解析したところ、進行期症例における奏効割合と一致しない傾向にあることを確認した。また、2009年1月~2019年12月までに根治的切除術を受けた非小細胞肺癌患者で、2020年12月までに再発時に再発腫瘍検体が得られている症例をリストアップしたところ60例であった(コホート2)。このうち14例の手術時と再発時のペア検体についてコホート1と同様にTME測定を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
コホート2の未測定の症例を対象に順次TMEの測定を行う。TMEをコホート1で求めたカットオフ値よりグループ分類し、手術時・再発時のペア検体でそれぞれの分類の一致率を検定する。さらに組織型、術後補助化学療法の有無、再発までの期間などでその一致率に傾向の差が認められるのかを解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
コホート2の検体について測定を開始するにあたり、本研究の構想当初にリストアップした症例のうち、測定開始に着手する時点でかなり年月の経過した検体が含まれていることについて、研究グループ内でディスカッションを行った。免疫染色の測定結果に与える影響を考慮して、古くても10年以内の検体、なるべく5年以内の検体を優先的に測定する方針とした。費用と症例数の確保の点を鑑みて、コホート2に組み入れ可能な症例のリストをアップデートするのに時間を要した。未測定の候補症例検体につき次年度に測定を行うのに、費用を充てる予定である。
|