2021 Fiscal Year Research-status Report
患者由来オルガノイドを用いた、病理診断、遺伝子解析、治療有効性に関する研究
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20K08574
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池村 辰之介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30445291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オルガノイド培養 / 肺癌 / 病理学的診断 / 分子生物学的診断 / 精密医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんゲノム医療の進歩や新規治療薬の開発により肺癌患者の予後は急速に改善しつつある。これら医学進歩の恩恵を受けるためには、十分量の検体が採取できていることが必要である。しかし、進行肺癌患者の多くは気管支鏡検査や画像ガイド下針生検などによる微小な検体しか採取できない場合が多く、様々な遺伝子異常、発現プロファイルが十分に評価できないことが実臨床における問題となっている。 申請者らは微小の肺癌検体から癌細胞を増殖させ、継続培養するオルガノイド培養基盤を確立した。3次元培養であるオルガノイド培養技術が確立し、癌細胞から効率的かつ短期間で細胞株が樹立できるようになった。この技術により肺癌の検体量不足、診断不確定により治療の恩恵が受けられない患者にも、個別化医療を実現できるのではないかと考えた。 肺癌オルガノイドを用いることで、癌細胞を増殖させ、遺伝子変異や発現プロファイルを評価できる可能性がある。また、生きた細胞である肺癌オルガノイドを用いることで有効な薬剤を体外で評価することも可能になる。本研究の目的は、「肺癌の診断・個別化医療における肺癌オルガノイドの有用性を評価すること」である。 2021年3月現在、手術検体、気管支鏡検体、胸水、腹水、喀痰など様々な検体から、約100例以上の肺癌オルガノイドを樹立している。 各患者から採取した検体から樹立した肺癌オルガノイドと実際の肺癌検体での、病理学的な相同性、相違性の評価を行っている。 さらに肺癌オルガノイドを用いた薬剤感受性・耐性、治療効果の予測を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年3月現在、手術検体、気管支鏡検体、胸水、腹水、喀痰など様々な検体から、約150例以上の肺癌オルガノイドを樹立し、臨床検体との病理学的な相同性、相違性の評価を行っている。 また同時に、臨床検体とオルガノイドにおける、薬剤感受性・耐性についての評価、遺伝子プロファイル(EGFR、ALK、BRAF、ROS1、MET、HER2、KRAS、tumormutation burden等)、PD-L1発現といった分子生物学的な評価、比較を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
各患者から採取した検体から樹立した肺癌オルガノイドが、実際の肺癌検体と、病理学的、分子生物学的な相同性、相違性を評価する。臨床情報と比較することにより、薬剤感受性・耐性についても評価を行う。臨床検体、それから樹立したオルガノイド双方において、臨床でもすでに活用されている、または臨床試験・治験のターゲットとなっている遺伝子プロファイル(EGFR、ALK、BRAF、ROS1、MET、HER2、KRAS、tumor mutation burden等)、免疫チェックポイント阻害薬の バイオマーカーとなっているPD-L1発現を評価、比較する。そして、治療効果を含めた臨床情報も統合して解析し、有効性を評価する。 今後、病理学的な診断困難例、胸郭内に病巣を有する原発不明癌に対しても、臨床検体とオルガノイドにより、病理学的診断、免疫染色、遺伝子プロファイルによる評価、比較を行う。また併せて、薬剤感受性・耐性、治療効果予測の評価を行う予定である。
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