2022 Fiscal Year Research-status Report
腎糸球体上皮細胞スリット膜におけるNeurexinの役割の解明
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20K08587
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福住 好恭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20609242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内許 玉楓 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00529472)
安田 英紀 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00806490)
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポドサイト / スリット膜 / neurexin / CD2AP / Podocin / Nephrin / ネフローゼ症候群 / 蛋白尿 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前の検討でNeurexin1αは細胞外部ドメインに選択的スプライシング部位を持ち、ポドサイトで発現しているNeurexin 1αはスプライシングサイト(SS)4+の分子型であることを示した。令和4年度は、Neurexin1αとスリット膜主要分子CD2AP、Podocinとの結合様式をHEK293細胞発現系で解析した。その結果、CD2AP、PodocinはSS4+のみと結合し、神経細胞に多いSS4-とは結合しない事を明らかにした。一方で、Par6、CASKはSS4の有無に関わらず、Neurexin1αと結合することを明らかにした。次に、Neurexin1αのCD2AP、Podocinとの結合部位の解析を行い、2分子ともにNeurexin1αの細胞内部の前半部で結合することを明らかにした。以上の結果から、Neurexin1αの細胞外部のSS4はCD2AP、Podocinと細胞内部で結合するのに重要であることを示した。 ネフローゼ症候群におけるNeurexin1の発現を検討するため、ヒトの巣状分節性糸球体硬化症のモデルであるアドリアマイシン(ADR)腎症におけるNeurexin1の免疫染色を行った。二重染色による解析で、正常糸球体で観察されたNeurexin1とCD2APの共局在が、蛋白尿がまだ出現していない病態誘導後24時間で減少し、7日目ではNeurexin1とCD2APの染色がほとんど消失していることを明らかにした。以上の結果から、Neurexin1とCD2APの乖離が蛋白尿の発症に関与していると考えた。 発達期糸球体を用いた発現解析で、Neurexin1がスリット膜形成に関与することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度までの検討で単離糸球体可溶化材料を用いた解析で、Neurexin1αはスリット膜構成分子の1つであるCD2APと相互作用することを示した。本年度は、Neurexin1αとCD2AP、及びNeurexin1αとスリット膜主要分子の1つであるPodocinとの結合様式をHEK293細胞発現系で詳細に解析し、CD2AP、PodocinはSS4+のみと結合し、神経細胞に多いSS4-とは結合しない事を明らかにした。さらに、Neurexin1αのCD2AP、Podocinとの結合部位の解析を行い、CD2AP、PodocinともにNeurexin1αの細胞内部の前半部(1476-1503アミノ酸)で結合することを明らかにした。また、Par6、CASKはSS4の有無に関わらず、Neurexin1αと結合することを明らかにした。以上の結果から、Neurexin1αの細胞外部のSS4はCD2AP、Podocinと細胞内部で結合するのに重要であることを明らかにした。 巣状分節性糸球体硬化症のモデルであるアドリアマイシン(ADR)腎症を用いた解析で、蛋白尿がまだ出現していない病態誘導後24時間ですでにNeurexin1とCD2APの共局在が減少し、7日目ではNeurexin1とCD2APの染色がほとんど消失していることを明らかにした。これらの所見は、Neurexin1とCD2APの乖離が蛋白尿の発症に関与していることを示す所見と考えた。 発達期糸球体を用いた発現解析で、Neurexin1がスリット膜形成に関与することを示す所見を得ている。 以上より、本研究課題は当初の計画通り順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
Neurexin1αノックアウト(KO)マウス糸球体材料を用いたこれまでの検討で、SNARE複合体分子群synaptobrevin、SNAP-25、Syntaxinの発現解析を行ったが、MintやMunc18などのSNARE複合体関連分子群の発現解析は未検討である。そのため、Neurexin1α KOマウス糸球体、あるいはNeurexin1αノックダウン(KD)培養ポドサイトでのSNARE複合体分子群の発現解析を行う。発現変化が見られた分子について、Neurexin1αとの相互作用を二重染色法、及び免疫沈降法で解析する。 ネフローゼ症候群モデルの免疫染色で観察されたCD2APの染色強度の低下の原因が、Neurexin1αの発現減少による発現低下かどうかを調べるため、Neurexin1α KOマウス糸球体、あるいはNeurexin1α KD培養ポドサイトのCD2AP発現をリアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法で解析する。また、令和4年度の解析でNeurexin1αの結合蛋白質として新たに同定されたPodocinの発現解析をNeurexin1α KOマウス糸球体を用いた免疫染色法で行う。また、Neurexin1とPodocinの相互作用を、単離糸球体可溶化材料を用いた免疫沈降法で確認する。 発達期糸球体を用いた解析でNeurexin1とNephrinの共局在を示したが、Neurexin1の詳細な発現様式は未検討である。Neurexin1がいつ、どこで発現、局在するのかを明らかにするため、Neurexin1とNephrinの二重染色を発達期糸球体の各発達段階で解析を行う。また、CD2APとの二重染色も行い、Neurexin1のスリット膜形成時における役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進んだため、遺伝子改変マウスの飼育経費が抑えられた。更なる解析に必要な遺伝子改変マウスの飼育経費、及び、ネフローゼ症候群モデルの作製と相互作用解析に必要な試薬を購入する。
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Research Products
(7 results)