2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症を抑制する新規治療ワクチンの薬効とメカニズムの解明
Project/Area Number |
20K08590
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝谷 友宏 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教授 (30311757)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中神 啓徳 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20325369)
林 宏樹 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (20813364)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 糖尿病性腎症 / ワクチン / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国において食生活の欧米化などに伴い糖尿病は増加し、糖尿病性腎症は神経障害、網膜症と共に三大合併症の一つとして知られ、人工透析の原因疾患の第一位であり、新血管イベントも合併しやすく予後も悪い。 我々は治療ワクチンにより薬物の長期投与が必要な糖尿病などの慢性疾患や難病等に対して数回の投与で長期薬理作用をもたらすことを期待し研究開発を行なっている。今回、糖尿病性合併症と相関が報告されている(プロ)レニンに着目した。(プロ)レニンはレニンの前駆体として知られており、(プロ)レニン受容体を介して炎症を引き起こすことが知られている。これまで先行的に行った検討によって(プロ)レニンを標的としたワクチンを開発し、糖尿病性網膜症の発症抑制効果を見出しており、今回糖尿病性腎症において効果について検討を行なった。 (プロ)レニンワクチンを糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)に投与し、糖尿病性腎症の初期症状であるアルブミン尿の検討と行ったところ、(プロ)レニンワクチンを投与したマウスにおいてはアルブミン尿の改善が認められた。腎臓における炎症性分子の発現を確認したところワクチン群において炎症性サイトカインなどの発現が抑制されていることがわかった。また腎臓の病理組織解析を行ったところ、糖尿病性腎症でみられるような糸球体肥大などワクチン群で抑制されている可能性が見られた。 これらの結果より(プロ)レニンをターゲットとするワクチンにより糖尿病性腎症を抑制できる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルスの影響で大きく実験の遅れがあったが、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)に(プロ)レニンワクチンを投与、抗体価測定、アルブミン尿の検討、腎臓の分子生物学的解析とが動物実験での検討を実施することができた。 ワクチンによる抗体価の上昇とリコンビナントに対する反応を確認し、糖尿病モデル(db/db) マウスの腎臓において糖尿病性腎症で見られる尿アルブミン尿の抑制が認められた。さらに炎症性サイトカインの発現が抑制され、腎糸球体の肥大が抑えられていることがわかった。しかしながらマウスのN数が少なく、さらなるN数での解析が必要であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はさらにN数を追加して再現性の確認を含めて実験を実施する。またdb/dbマウスは2型糖尿病モデルとして知られているが、他の2型糖尿病モデルマウスであるKKマウスやK Kyマウスでの検討や、1型モデルであるストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルでの検討を行う予定である。
|