2020 Fiscal Year Research-status Report
DKDが近年増加している原因の分子メカニズムの解明
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20K08593
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
冨永 辰也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (80425446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 秀斉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60399342)
長井 幸二郎 徳島大学, 病院, 講師 (40542048)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎臓病(DKD) / 腎硬化症 / 動脈硬化 / 高血圧 / BMP4 / ERR |
Outline of Annual Research Achievements |
腎硬化症は持続的な高血圧によって、細動脈や小動脈における内膜の肥厚やフィブリノイド壊死などの動脈硬化病変により血管内腔が狭窄することで、糸球体虚血から糸球体硬化を引き起こすとされていた。しかし、高血圧の罹病期間と腎硬化症の程度が必ずしも相関しないことなどから、腎硬化症は必ずしも長期間の高血圧のみによる変化ではないという報告もある。大血管と細小血管の両者に異常が認められる動脈硬化性腎障害は、糖尿病性腎臓病(DKD)のうち、近年増加している非典型症例に含まれ、発症原因の解明が急がれている。 糖尿病性腎症(DN)の発症進展に作用するBMP4(Bone morphogenetic protein 4)は、血管新生・分化、脂肪細胞分化、造血幹細胞分化など恒常性維持に作用する一方で、血管障害を含む様々な疾患形成を促すサイトカインである。全身のBMP4作用から腎硬化症を含む動脈硬化性腎障害の発症機序を解明し、原因分子とそれらの抑制化合物を探索することを目的とする。女性が閉経後から動脈硬化が進行しやすくなるように、エストロゲン受容体などの核内受容体と動脈硬化の関連性は強く、大動脈石灰化を誘導するBMP2/4は、核内受容体であるEstrogen Related Receptor (ERR)の調整を受ける。ERRとBMP4の作用について、新規の腎硬化症の分子病態機序を解明することを目的とする。 本研究では、管内皮特異的BMP4過剰発現マウスの解析にTi2CreマウスとCAG-CAT-Bmp4マウスを交配させ(Bmp4xTie2マウス)血管内皮にBMP4を発現させることで、BMP4の腎硬化症と動脈硬化への作用を解析する。血管周辺へのBMP4増加により血管近傍の炎症が誘発され、血管周囲の線維化が亢進することで腎硬化症に至ることが示唆された。HEK293細胞を用いてERR(α,β,γ)安定発現株を作製し、ERRのBMP4プロモーター領域への結合証明から病態発症機序を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.血管内皮特異的BMP4過剰発現マウスの解析 Ti2CreマウスとCAG-CAT-Bmp4マウスを交配させ血管内皮にBMP4を発現するマウスを作製した。BMP4の腎硬化症と動脈硬化への影響を病理学的に解析した。変異マウス血管内皮のαSMA発現が増加し、腎臓内動脈と大動脈の中膜が肥厚することが確認された。また、コントロールマウスに比べて血中TGが上昇しており、脂質代謝異常を引き起こしていることが示唆された。さらに、変異動物の一部で収縮期血圧が140mmHgを越す個体を確認した。腎臓の血管周囲に間質障害が起こっており、BMP4によって線維化が亢進されたと示唆される。次年度から炎症、虚血、細胞老化の観点から各種マーカーの変動を検討する。 2.ERRをターゲットとした創薬 HEK293細胞を用いて、核内受容体Estrogen Related Receptor (ERR)の安定発現細胞作製を進めてきた。ERR α、β、γの発現ベクターそれぞれを細胞にトランスフェクションし、耐性遺伝子にてセレクションをかけた。ERRの細胞内発現量が異なるクローンを複数得た。次年度から作成した細胞を用いて、ERRのBMP4発現機序について解析を進める。核内受容体ERRのリガンドに類似した化合物の構造を解析した。骨格中のフェノール、カルボキシル基、メチル基などを元に分類し、いくつかの化合物を選択した。腎培養細胞を用いて、炎症条件下、糖尿病条件下にて各種化合物の影響をqPCRにて解析を進めている。BMP4、VEGFの発現量から、細胞レベルでは緩和効果を示す化合物を得ている。今後、動物モデルにて効果検証を進める。 当初の計画通り変異動物の作製、創薬ターゲットの選定が進んでおり、次年度に繋がる結果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
変異動物の病態解析と病態モデルを用いた化合物の効果検証を行う。血管周囲にBMP4を発現するモデルについては、Tie2モデル(血管内皮)が先行しておりSM22モデル(血管平滑筋)を追加する予定である。新型コロナウイルス感染症の影響により、消耗品、試薬が入手しにくくなっており、研究計画に影響が出る可能性がある。令和3年度は、動物、細胞等のストックがあり実験遂行に問題はないと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、年度末に依頼した試薬の納期が遅れた。翌年度に繰越した予算で4月中に納期完了する予定である。
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