2020 Fiscal Year Research-status Report
糸球体内皮細胞-上皮細胞連関におけるsGC活性化の意義と治療戦略
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20K08602
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
長洲 一 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40412176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
城所 研吾 川崎医科大学, 医学部, 講師 (50435020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | sGC / 内皮機能障害 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦における慢性腎臓病(CKD)患者は増加傾向にあり、死因の第8位を占め、重要な医療問題としてその解決が望まれる。早期のCKD発症には内皮機能障害が重要であることを報告してきたが、多くの基礎研究から糸球体上皮細胞障害が腎不全に至る糸球体硬化病変の形成に重要であることが判明している。早期のCKD発症には内皮機能障害が重要であることを報告してきたが、 多くの基礎研究から糸球体上皮細胞障害が腎不全に至る糸球体硬化病変の形成に重要であることが判明している。糸球体上皮細胞障害(特にミトコンドリアストレス、apoptosis)の結果、上皮細胞が脱落し、糸球体上皮細胞が非分裂細胞であるが故に、糸球体硬化が進行する。CKDの最早期病態(アルブミン尿)には糸球体内皮障害が関与し、その後の腎不全に至る過程には、糸球体上皮障害が深く関与する。このため糸球体内皮細胞から上皮細胞への障害機序伝搬・クロストーク機序(内皮―上皮連関)が想定されるが、実態は不明である。本研究では、「内皮機能障害によるeNOS-NO機能不全が糸球体上皮細胞のsGC活性化低下を介して、糸球体硬化病変を形成を促進させる」との仮説を証明するべく検討を行う。 目的は以下の3つである。1)糸球体内皮機能障害が腎障害を進行させるか検討する。2)糸球体上皮細胞におけるsGC活性化の意義を検討する。3)sGC活性化制御による治療介入意義を検討するため薬剤介入を行う。これらの目的を達成するためeNOS欠損マウス及び糸球体上皮細胞特異的sGC欠損マウスを用いて糖尿病モデル及び加齢モデルの解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
eNOS欠損マウス(eNOSKO)を用いた検討は順調に進んでいる。eNOS-STZおよびeNOS-db/dbを用いた糖尿病性腎症を対象とした検討はほぼ終了しており、現在糸球体内の遺伝子発現変化をpodocyteで検討している(解析中)。通常の糖尿病モデルでは軽微な糸球体障害に止まり、腎機能低下(GFR低下)は来さない。しかしながらeNOSKOを背景とした糖尿病モデルでは、硬化糸球体が出現することが示された。また、これらのモデルでは糸球体上皮細胞(Podocyte)でInflammasome 活性化が起こっていることも見出した。また加齢モデルの解析も終了している。in vitroでNitric oxideが炎症を抑制することを見出しATAC-seqの解析も終了した。この結果、Nitric oxideがある転写因子領域のクロマチン構造を変化させ関連遺伝子の発現制御と行っていることが判明した。 また、さらにeNOS-NO経路の破綻によって認められる現象が糸球体上皮細胞におけるsGC活性化の低下の影響を検討するため糸球体上皮細胞特異的sGC欠損マウス(podo-sGC-KO)を用いて研究を行う。当初、sGC欠損マウスは現在作製中で2019年内には搬入する予定であったが、コロナ禍の影響で半年程度遅れて搬入となったため若干の遅れが生じている。現在、交配も進んでおり大きな問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はpodo-sGC-KOを用いた研究を中心に進める。現在交配中で、作出後はSTZ投与による糖尿病モデルを作成し検討を行う予定である。本検討で上皮細胞におけるsGC活性化の意義を証明することができると同時に、内皮ー上皮細胞連関の機序としてガス分子であるNitric oxideが糸球体上皮細胞におけるsGC活性化を介して保護的に働くことを示すことができる。また、薬剤介入実験に関してはsGC活性化薬を用いて検討を行う。primary podocyteをWT及びpodo-sGC-KOから採取し検討を行う。sGC活性化薬によるincubationで遺伝子発現の変化を検討する。in vivoで認められた遺伝子発現制御が再現されればその制御機構を明らかにするためATAC-seqを行い、遺伝子発現におけるEpigenetic制御機構を解明する。 さらにin vivo で糸球体上皮細胞をターゲットとしたsingle nuclei RNA seqencing の技術を確立しており、病態におけるpodocyteの変化を継時的に評価して行く。すでに、正常マウスと糖尿病モデルマウスの糸球体内の遺伝子プロファイル変化を検討しており、解析中である。
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Causes of Carryover |
糸球体上皮細胞特異的sGC欠損マウス(podo-sGC-KO)の作出に遅れが生じたため、令和3年度へ繰り越している。既に、動物は搬入済みで交配は順調に進んでいる。このため一部のsequence 費用がずれ込んでいるが4月時点で解析を進めることができており大きな遅れはない。
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