2020 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性腎炎の病態に関係する細胞表面上の自己抗原複合体の解析
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20K08622
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
三浦 惠二 藤田医科大学, 保健衛生学部, 講師 (20199946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己抗体 / 血管炎 / AECA / 自己抗原 / 全身性エリテマトーデス / 腎炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題初年度の目標としては、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者で腎炎症状を呈する患者を対象に、我々が開発したCSP-ELISAで強陽性となる患者を特定すること。そしてその患者にリンパ球の提供をお願いし、外注によるEBウイルス感染でのリンパ芽球細胞株を樹立することであった。CSP-ELISAで陽性となるということは、細胞表面上の自己成分に対しての自己抗体を産生していることを意味しており、昨年度までの準備段階ではSLE患者の60-80%で陽性になることがわかっていた。リンパ芽球細胞株を樹立し、かつその中に自己抗体産生B細胞を含むためにはCSP-ELISAでの強陽性であることが課題を遂行するために重要なポイントになると考えていた。 初年度、研究協力者である医師および病院でCOVID-19への対応業務が増加したこと、検体提供を患者に説明・依頼する機会を持つことが困難になり、CSP-ELSIAで測定できた検体は28にとどまった。そのため、強陽性と判断できる患者を見つけ出すことができなかった。一番高値を示す患者のリンパ球を使用しても良好な結果を得られる可能性が低いと判断したため、今後の検体数増加を期待して先には進まなかった。 その状況下、COVID-19患者において血管炎が特徴であること、腎臓を含めた多臓器不全による重症化があること、さらに、後遺症として様々な症状が知られ、自己抗体産生が起こっていることを示す論文も出てきている。本研究では、細胞表面上にある新規自己抗原の同定が課題である。患者数が多いことでSLE患者を対象にしているが、COVID-19患者の血清中の自己抗体の検出も課題から大きく外れることではないと判断し、現在、COVID-19患者の血清を使用してCSP-ELISAで自己抗体を測定するために倫理審査委員会への審査依頼を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大のため、研究協力者の医師および病院の状況から、予定していた数の全身性エリテマトーデス患者の血清を得ることができなかった。そのため、十分な強陽性と判断できる検体が得られなかったため、先のステップには進めなかった。先のステップとは、外注によるEBウイルス感染でのリンパ芽球細胞株樹立の依頼であるが、自己抗体価が低いと自己抗体産生細胞の数も少ないと考えられ、費用をかけても無駄になるリスクがあると判断したからである。今後の検体数増加に期待している。 過去に患者から提供を受けた保存血清を使用して、免疫沈降法による自己抗原の同定実験も試みた。しかし、研究代表者が、エフォートとして大きい教育業務があり、コロナ禍の対応に追われて実験を十分に行うことが出来ず、明確な研究成果を出すことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の患者数増加は今も続いてはいるが、昨年の不透明な状態に比較すると検体を準備できる体制にはなってきているので、まずは、CSP-ELISAでの測定数を増やすことを予定している。そして強陽性と判断できる検体が見つかった場合は、患者にリンパ球の提供を依頼し、外注によるEBウイルス感染でのリンパ芽球細胞株樹立を目標とする。また、その血清を用いた免疫沈降法による自己抗原の検出と同定も試みる。 さらに、COVID-19患者血清を用いてCSP-ELISAを行い、抗血管内皮細胞抗体(AECA)の検出を試みる。自己抗体価が高値であるならば、細胞表面膜タンパクを使用した免疫沈降法で、自己抗原の検出および同定を試みる。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い、十分な数の患者血清を集めることができず、その結果、自己抗体が強陽性となる患者を見つけることができなかった。そのため、費用の多くを外注でのEBウイルスによるリンパ芽球細胞株樹立に当てることを予定していたが、それを中止したため、その費用が次年度にまわることになった。今後は患者血清の検体数が増加することが期待できるので、実施できなかった実験に使用する予定である。 また、研究代表者がエフォートで半分を占める教育でのコロナ対応に時間が取られ、患者血清を用いた免疫沈降法による自己抗原の検出および同定実験が十分に出来なかった。そのため、一般試薬・プラスチック製品などの費用も使用出来ず繰越となった。今後は実験時間を増やして使用する予定である。
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