2022 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性腎炎の病態に関係する細胞表面上の自己抗原複合体の解析
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20K08622
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
三浦 惠二 藤田医科大学, 保健衛生学部, 講師 (20199946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗血管内細胞抗体 / 自己抗体 / 自己抗原 / 細胞表面抗原 / 血管炎 / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者血清を用いた免疫沈降法で、自己抗原の精製を行い、得られたSDS-PAGEのバンドを質量分析にかけて抗原の同定を行った。患者特異的に検出されるバンドを得られているが、検出されている分子量に相当するタンパク質にほとんどたどり着けなかった。唯一55kDa付近のバンドについては、ビメンチンと一致すると判断できた。そこで、市販のビメンチンタンパクと、抗ビメンチン抗体を用いたサンドイッチELISAを実施した。ELISAプレートに抗ビメンチン抗体をコートして、そこにビメンチンタンパクを捕捉する。それに患者血清を反応させ、抗ヒトIgG抗体で検出する方法である。その測定の結果、40検体で1検体は明らかな陽性、5検体が弱陽性となった。ビメンチンに対する自己抗体を持っている患者がいることが確認できたが、自己抗原は他にもあることも明らかとなった。免疫沈降で検出される患者特異的バンドが最低3本あることからすると、複合体であると考えられ、その成分の1つがビメンチンであり、他の成分に対する抗体を持っている患者がいると考えている。 一方、自己免疫性腎炎患者が持つ自己抗体(抗血管内皮細胞抗体:AECA)は他の自己免疫疾患でも知られている。さらにCOVID-19の患者血清にも存在することが示唆され、病態としても血管炎が特徴であることから、COVID-19患者血清も並行して調べた。本学でCOVID-19患者の血清を用いて研究しているグループの協力を得て、CSP-ELISAでAECAの有無を調べた。健常人では陽性率が数%程度であるのに対して、COVID-19患者では3割以上の高率で陽性者がいることが判明した。COVID-19患者においては、後遺症を残す患者も多く、その原因は未だにはっきりしていない。COVID-19の病態あるい後遺症の病態の解明の一助となることが期待できるため、標的自己抗原の同定を試みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では、患者より提供していただいたリンパ球を元に、EBウイルスを用いたリンパ芽球細胞株を株化し、さらに自己抗原に結合する抗体を産生する細胞株のクローニングまでを、株)イーベック社に外注する計画であった。その外注のために2年間で120万円の予算を準備していた。ところがイーベック社がその受託サービスを中止してしまい依頼できなくなってしまった。 また、外注を予定していた実験の一部である、EBウイルスによるリンパ芽球細胞株の受託については他社でも見つかったが、予定した予算よりはるかに高額なため依頼することが出来ず、研究方法を再考する必要に迫られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本来予定していた実験手法が実施できないため、本研究課題の目標である自己免疫性腎炎患者が持つ自己抗体(抗血管内皮細胞抗体:AECA)が結合する新たな自己抗原の同定については、古典的な手法である免疫沈降法と質量分析で実施するしかないと判断している。また、これまでの結果からするとAECAは複数種類の抗体の混合物であり、標的となっている自己抗原は複合体である可能性が高い。しかも自己抗体の種類は、患者ごとに違うことも想定される。これまでは、免疫沈降で得られたサンプルをSDS-PAGEで分離していたが、他のカラムなどを使用して複合体をそのまま精製し、質量分析することを予定している。 一方、COVID-19患者でもAECA陽性率が高いことが判明したため、同様に患者血清を用いて免疫沈降実験を行い、患者特異的なタンパクの同定を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験手法の中で、企業の受託を予定していたものがサービス中止により、依頼できなくなった。そのため、実験手法を変更することになり、研究期間延長が必要になった。
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