2020 Fiscal Year Research-status Report
時計遺伝子Dec1発現レベルによる皮膚創傷治癒速度の変動に関する研究
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20K08659
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40190904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮膚創傷治癒 / 時計遺伝子 / Dec1発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
時計遺伝子はその組織での発現がリズムを持つことにより体全体または抹消組織の概日リズムを調節している。我々は時計遺伝子の一つであるDec1がTGF-beta/Smad3シグナル経路の下流遺伝子の1つであることを突き止め、Dec1がTGF-beta/Smad3シグナルの結果起こる、線維化促進と上皮細胞の増殖抑制作用を制御することを示してきた。今年度実施した研究において我々はまず皮膚におけるDec1の発現が概日リズムを持っていることをマウス皮膚を用いてRT-PCRによって検索した。結果は皮膚組織においてもDec1発現はリズムを持っており、ZT0で最小でZT12で最大であることを示した。この結果を基に、我々はもし皮膚に創傷が生じた時、Dec1の発現により創傷治癒の速さに影響を与えるかどうかという疑問を持ち、皮膚に創傷が生じた時間と創傷治癒に要する時間の関係を検索した。朝8時から4時間毎に、野生型C57BLマウスの背部に麻酔下で直径4 mmの皮膚生検用パンチにより円形の皮膚欠損を与え、創傷を受けた時間と創傷が修復するまでの時間との関係を検索した。組織修復の評価は肉眼的および組織学的に行った。肉眼的評価では朝8時に損傷を与えた皮膚で他の時間に損傷を受けたものより有意に修復時間が短かった。また組織学的評価でも朝8時に受けた損傷における表皮の再生が最も早く起こることを観察した。このことは朝8時に皮膚のDec1発現が最も低いことと関連があると考え、表皮細胞内のDec1発現をin situ hybridizationにより示す必要があると考えている。またDec1欠損マウスをCRISPR/Cas9法により作成し、野生型マウスと皮膚創傷治癒において、その修復時間に差が出るかを検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度行った結果が研究を始める時に考えた仮説と一致したので、仮説に則って実験を進められ、予想していた結果が得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度作成したDec1ノックアウトマウスを用いて研究を進める予定である。また皮膚組織におけるDec1発現をin situ hybridizationにより明瞭に示すことを目標とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて研究時間が縮小された事と、学会への参加ができなかったことが大きな理由である。今年度はノックアウトマウスを使用した研究を行うなど研究費の増額が予想されると考えている。状況が許せば学会への現地参加も行いたい。
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