2021 Fiscal Year Annual Research Report
時計遺伝子Dec1発現レベルによる皮膚創傷治癒速度の変動に関する研究
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20K08659
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40190904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 皮膚創傷治癒 / 時計遺伝子 / Dec1 |
Outline of Annual Research Achievements |
時計遺伝子Dec1は一日の中で概日リズムを持った発現を繰り返すが、これまでの我々の研究からDec1はTGF-β/Smad3シグナルの一つのターゲット遺伝子でもあり、創傷治癒において上皮の再生を抑制し線維化を促進することが分かっている。時計遺伝子Dec1はその発現が一日の中でリズミカルに変動することから、創傷がいつ起こるかによって治癒に要する時間が変動する可能性を考えた。研究者はマウスを用いて、背部皮膚に皮膚生検用パンチで4時間毎に創傷を与え、それぞれが治癒する速さを比較した。表皮細胞におけるDec1の発現は免疫染色、in situ hybridizationおよびReal-time PCRにより検索した。創傷後定期的に皮膚組織を採取し創傷の状態を観察した。表皮の再生が完全に真皮を覆った時点を治癒とし、創傷からの時間を比較した。また、Dec1ノックアウトマウスを用いて同様の実験を行い、野生型マウスにおける創傷治癒の時間と比較した。皮膚におけるDec1発現は午前8時に最も低下しており、午後8時に最大になった。Dec1発現と連動して表皮再生の速度は午前8時に損傷された皮膚において最も早く創傷治癒が起こった。さらにDec1ノックアウトマウスを用いた実験においては野生型マウスよりも速く創傷治癒が起こった。Dec1がTGF-β/Smad3シグナルのターゲット遺伝子の一つで、上皮における増殖を抑制作用を調節していると考えると、創傷治癒早期におけるDec1発現の違いが上皮再生の初速度を規定し、最終的な治癒に至る速度に影響している可能性を考えた。
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