2022 Fiscal Year Research-status Report
かゆみ過敏の治療に向けたアロネーシスの発症因子および調節機構の解明
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20K08680
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
古宮 栄利子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (90647009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高森 建二 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (40053144)
冨永 光俊 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (50468592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | かゆみ過敏 / アロネーシス / 神経ペプチド / CD26 / オピオイド |
Outline of Annual Research Achievements |
アロネーシスとは知覚過敏現象のひとつで、通常は侵襲性のない機械刺激をかゆみと感じる現象を指す。研究代表者は、CD26欠損マウスの検討から、CD26の有するジペプチジルペプチターゼIV(DPPIV)酵素活性がアロネーシスを抑制していることを見出し、CD26によって調節を受けるアロネーシス促進因子として、選択的mu-オピオイドリガンドであるエンドモルフィン(EM-1,EM-2)を同定した。 しかしEMは、機械刺激によるアロネーシスのみでなく、無刺激下の自発的かゆみを促進するのに対し、CD26欠損マウスでは、アロネーシスのみが亢進していた。この原因を明らかにする目的で、EM-1,EM-2の濃度を振ったところ、EM-1,EM-2は高濃度ではアロネーシスと自発的かゆみの両方を促進するのに対し、低濃度ではアロネーシスのみを亢進することが示された。このことから、CD26欠損マウスにおけるEM-1,EM-2の濃度が低く、アロネーシスのみを亢進させた可能性が考えられる。 また自発的かゆみはC線維を、触覚はA-beta線維を介して脳まで伝達されることが知られているが、アロネーシスの伝達経路は解明されていない。そこで今回、EM-1,EM-2がどの神経線維を介してアロネーシスを伝達しているのかを解明を試みた。免疫染色の結果、EM-1およびEM-2はC線維マーカーのperipherin、A-beta線維マーカーのNF200の両方と共染色が観察された。そこで 、細胞膜透過性を低下させた局所麻酔薬QX-314と末梢神経の種類に特異的な受容体のアゴニスト(A-beta線維: TLR5アゴニストFlagellin、C線維: Capsaicin)をマウスに同時に作用させ、神経の選択的な阻害実験を試みた。その結果、2つのEMはA-beta線維を介してアロネーシスを誘導していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EM-1およびEM-2の機械的かゆみ誘導能およびCD26/DPPIVによるその調節メカニズムに関する論文を投稿したところ、査読者により多くの質問やコメントを得た。それら質問に全て答えるには、動物行動学実験の他、細胞学的な実験の実施が必要であった。現在、それらの質問・コメントから着想を得て、更に詳細な機序の解明を試みはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、EM-1とEM-2の機能について、より詳細な解明を行う予定である。前述のとおり論文投稿時に査読者から寄せられた質問やコメントのうち、特に「EM-1、EM-2は肥満細胞を脱顆粒するかどうか?」および「EM-1とEM-2の切断断片は、MORと結合できなくなっているか?」に着目し、肥満細胞やMOR発現細胞といった各種細胞を用いた実験を予定している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により例年に比べ学会発表が少なかったため、使用金額の低下につながった。 次年度はこれまでに解明してきた動物行動学の結果を踏まえ、EM-1, EM-2の詳細な機能を細胞レベルで明らかにする予定である。
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