2021 Fiscal Year Research-status Report
天疱瘡様自己抗体産生モデルマウスにおける樹状細胞活性化機構
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20K08681
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中野 直子 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (90222166)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アナジー化CD4T細胞 / Tfh細胞 / 自己抗体 / 表皮抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、通常成立している自己免疫寛容が破綻し、自己抗体が産生される機構を解明することを目的とし、表皮に発現誘導したモデル自己抗原に対して誘導される免疫応答を解析している。今年度は表皮細胞に発現誘導したモデル抗原に対する抗原特異的T細胞の応答を中心に解析し、これらの細胞がB細胞の抗体産生をヘルプする機構の解明を目指した。 表皮に抗原を発現誘導すると、発現した抗原を取り込んだ抗原提示細胞により、抗原特異的CD4T細胞はアナジー化した細胞に特徴的なCD73及びFR4を高発現する細胞に変化した。しかしこれらのT細胞は、Tfh細胞に特徴的な遺伝子のいくつかを発現していることがわかった。表皮細胞に細胞死を起こすような薬剤を塗布してストレスを誘導すると、抗原提示が亢進することにより抗原特異的T細胞の割合が減少する一方、CD4T細胞においてTfh細胞に特徴的な遺伝子の発現がさらに高くなった。これらのことから、表皮細胞ストレスによって誘導される何らかの因子によって活性化された樹状細胞は、Tfh細胞の分化を促進する因子を有していることが示唆された。 抗原特異的T細胞およびB細胞をもったマウスと、表皮に抗原を発現誘導するマウスを交配し、モデル抗原を誘導した。これらのマウスでは、一旦誘導されたT細胞のアナジー化が徐々に崩れ、皮下リンパ節のB細胞はIgG1陽性細胞に変化した。また、誘導後3週間経ったマウスでは、皮膚炎を発症した。これらのことから、このモデルマウスではT細胞がTfh細胞に分化し、B細胞を活性化して自己反応性IgG1抗体を産生し、抗体を介した皮膚炎が起きることが明らかになった。今後、T細胞のアナジー化を解除しTfh細胞に分化誘導する抗原提示細胞とそれらを介してT細胞を活性化させる分子機構を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はほぼ予定通りすすんでいるが、多くの遺伝子を導入したマウスを作製する必要があるため、解析に必要な十分量の個体数を得るのがなかなか困難である。皮膚に発現させた自己抗原によって活性化するT細胞がB細胞を活性化し、自己抗体を介して皮膚に炎症を起こすマウスモデルが確立できた。従って今後、計画的なマウスの交配によりマウスの個体数を確保し、確実な実験結果を得ていく。
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Strategy for Future Research Activity |
T細胞に誘導されたアナジー化を解除しTfh細胞への分化を促進する因子を明らかにする。皮膚にストレスを誘導してTfh細胞への分化が促進する条件下で、活性化してT細胞に抗原提示する樹状細胞を明らかにする。これらの樹状細胞に特徴的な分子を解析を行い、皮膚における細胞のストレスが皮膚の自然免疫応答を活性化し、Tfh細胞分化を導き、自己抗体産生に至る経路を解明する。
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Causes of Carryover |
さまざまな種類の遺伝子改変マウスを用意する必要があるためマウスの数を十分揃えるのに時間がかかり、これから解析を行う実験が残されている。これらの解析のため、今年度分を繰り越した助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)