2020 Fiscal Year Research-status Report
炎症性皮膚疾患患者における末梢血リポクオリティーの解析
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20K08682
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤田 英樹 日本大学, 医学部, 准教授 (10323544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葉山 惟大 日本大学, 医学部, 助教 (40647187)
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リピドミクス / 慢性特発性蕁麻疹 / アトピー性皮膚炎 / 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は慢性特発性蕁麻疹患者、アトピー性皮膚炎患者、健常人を対象としてリピドミクスを用いて血漿中の脂質メディエーターの網羅的解析を行った。血液サンプルを収集する際は、採血前4週間以内に免疫抑制剤(コルチコステロイド、シクロスポリン)を使用した患者を除外した。健常人に関しては、アトピー素因や慢性蕁麻疹の既往がなく、採血時時点で蕁麻疹を発症していない人を対象とした。対象者の血漿から固相抽出法で酸化脂肪酸を抽出し、液体クロマトグラフィー質量分析計を用いて解析した。Area under the curveを測定して定量化した。炎症収束作用を持つ遊離脂肪酸群はspecialized pro-resolving lipid mediatorsと呼ばれるが、特発性慢性蕁麻疹やアトピー性皮膚炎患者では、末梢血中のspecialized pro-resolving lipid mediatorsに代表される抗炎症性脂質メディエーターが健常人に比べて低い傾向にあることが判明した。また、慢性特発性蕁麻疹患者では、ドコサヘキサエン酸の代謝産物1種類とエイコサペンタエン酸の代謝産物1種類が蕁麻疹の重症度指標である7-day Urticaria Activity Score (UAS7) およびUrticaria Control Test(UCT)と有意な相関を示し上昇していた。さらに、これら2種類の脂質メディエーターは、慢性特発性蕁麻疹患者を抗IgE抗体であるオマリズマブでの治療した後に低下していた。現時点においては、アトピー性皮膚炎患者における重症度と相関する脂質メディエーターは見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、慢性特発性蕁麻疹患者、アトピー性皮膚炎患者、健常人を対象として血漿中の脂質メディエーターの網羅的解析を行った。その結果、特に慢性特発性蕁麻疹における病態生理や臨床的重症度に関与すると考えられる脂質メディエーターを少数ながら同定することができた。よって、研究はほぼ当初の計画通りに近い形で進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、臨床サンプル数が十分とは言えない状態である。今後はさらに臨床サンプルを収集して、より精度の高いデータを得る予定である。また、特発性慢性蕁麻疹患者やアトピー性皮膚炎患者のみならず、乾癬患者からもサンプルを収集して、脂質メディエーターの病態への関与を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は以前に購入していた既存の物品を優先的に使用することで、かなり研究を進めることが可能であった。それに伴い、研究に必要な試薬等の購入を延期したため、当初想定していたよりも、使用額が少なくなった。 令和3年度は、末梢血からの脂質の抽出や液体クロマトグラフィー質量分析において必要な物品の購入を進めていく予定である。
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