2021 Fiscal Year Research-status Report
乾癬モデルマウスにおける表皮resident memory T cellの解析
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20K08696
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
多田 弥生 帝京大学, 医学部, 主任教授 (00334409)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乾癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾癬は皮膚の紅斑・表皮の肥厚・隣屑を特徴とする慢性炎症疾患で、その病態にはIL-17/IL-23サイトカインネットワークが重要である。樹状細胞が主にIL-23を産生し、T細胞がIL-17を産生する。IL-17を産生するT細胞には自然リンパ球やTh17細胞など様々なT細胞が存在しているとされている。我々は、マウス皮膚へのイミキモド連日塗布によって、誘導できる乾癬モデルマウスにおいて、ヒトで認められたresident memory T cell (TRM)と同じ特徴を持ったTRMをマウス表皮で確認することに成功したため、この細胞が乾癬の病態、特に皮疹の再燃にどのように関与しているのかを明らかにするべく研究を進めている。マウスIMQ外用群の表皮においてTRM(CD8+CD69+CD103+)の存在が確認でき、そのほとんどがCD49a-を示していた。つまり、我々が表皮で確認したTRMは、最近乾癬患者で報告された細胞の特徴と一致していた。IMQ外用マウスにおいては、外用後しばらくすると制御性T細胞などの機能が活性化することにより、皮疹が自然寛解に向かうことはよく知られている。この寛解した皮膚においても、TRMが表皮内に残っていることが確認できた。その数は決して少なくなく、また、完全に乾癬の炎症としては沈静化していても、長期間細胞の機能は保持されており、IL-17など乾癬の皮疹形成に必要なサイトカイン産生能力は残っていた。また、IMQを再度外用することにより、これらの細胞は再び増数し、皮疹の再燃に寄与している可能性が示唆された。IMQ外用により皮疹が再燃する様々な段階において、その増殖のために必要な微小環境の検討、これらの細胞をターゲットとした抗体療法による再燃抑制などの検討から、ヒト乾癬における寛解維持の向上につながる新規治療方法の開発へとつなげていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスIMQ外用群の表皮においてTRM(CD8+CD69+CD103+)の存在が確認でき、そのほとんどがCD49a-を示していたが、この細胞は寛解皮膚からディスパーゼを用いて表皮と真皮を分離した後に、表皮と真皮別々に細胞を分離したなかで、単離することができた。この細胞は様々なサイトカイン刺激により(IL-23、TNFαなどの存在下での培養)IL-17、IL-22、IFN-γなどの産生をフローサイトメトリーで測定することが可能であり、IMQ外用中の様々な病態の途中経過において、その細胞の特性を明らかにできている。IL-17産生誘導なIL-23のソースの検索については、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト、樹状細胞を候補細胞として、フローサイトメトリーや免疫染色で検索しているが、これまでの報告通り、樹状細胞が主なソースとして考えられる。イミキモドで乾癬様皮疹を誘導する初めの6日間において、外用療法(ステロイド外用、ビタミンD外用、配合剤外用)、内服療法(JAK阻害剤、エトレチナート、アプレミラスト)、光線療法(ナローバンドUVB)、生物学的製剤(TNFα阻害薬、IL-23阻害薬、IL-17阻害薬)を投与し、治療を同時に行う予定でいたが、これらの治療法により、マウスの乾癬皮疹が改善することは確認でき、治療モデルが完成した。治療直後(day 6)、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後の皮膚を採取し、治療がTRMに与える影響について免疫染色、フローサイトメトリーなどを用いて検討しているところであり、以上から概ね研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きTRM(CD8+CD69+CD103+)の細胞の性質について、乾癬の皮膚における微小環境に存在するサイトカイン刺激により、その状態を模して、検討を続ける。細胞の培養、サイトカイン刺激、その結果としての細胞の性質の検討を行うのに必要な試薬、実験器具、技術は全て研究室にあるため、問題なく遂行できる。同時に、表皮内におけるTRM(CD8+CD69+CD103+)の残存する数に対する現存する治療法、具体的には外用療法(ステロイド外用、ビタミンD外用、配合剤外用)、内服療法(シクロスポリン、エトレチナート、アプレミラスト)、光線療法(ナローバンドUVB)、生物学的製剤(TNFα阻害薬、IL-23阻害薬、IL-17阻害薬)の影響を検討していく。これらの治療法をマウスモデルに施行することにもすべて成功しており、光線照射装置も含めて、機器、試薬全て揃っており、これらの治療によって、マウスの皮疹が改善し、皮膚の中でのサイトカイン発現も改善することを確認している。この中で、エトレチナート、光線療法、IL-23阻害薬投与による効果が得られた後の寛解維持が他の治療法より長期に認められることがすでに報告されている。この理由として、炎症を抑制する制御性T細胞の増数が指摘されているが、一方で、これらの治療の中に、特にTRMをターゲットとした治療が存在するのであれば、そのことも寛解維持に向いた治療であることを示唆すると考える。なかでも、表皮や真皮浅層のリンパ球をターゲットとしてアポトーシスを誘導することのできる光線療法にはそうした作用があるのでないかと考えている。一旦TRMが消失した状態がどのくらいで続くのか、また、ふたたび増数に転じるのかも含めて検討を続けていく予定である。
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Research Products
(2 results)