2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of therapeutic formulation for inflammatory dermatitis based on structure analysis of stratum corneum
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20K08699
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
小幡 誉子 星薬科大学, 薬学部, 教授 (20260979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮膚角層 / 細胞間脂質 / ラメラ構造 / セラミド / 放射光X線回折 / 赤外分光 / 示差走査熱量測定 / 温度走査小角広角X線散乱同時測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、疾患皮膚角層の微細構造の検討のために、まず、細胞間脂質のバリア機能やその改善に着目して基礎的な知見を得ることを目標とした。細胞間脂質が形成する微細構造は脂質組成の影響を受けることはすでに知られており、細胞間脂質モデルを使用した研究では、短い層状周期性が異なる2つの相の形成が報告された。しかしながら、これらの細胞間脂質モデルで観察された2つの相の充填構造特性の詳細はこれまで不明な点が多かった。この度行われた温度走査X線小角広角同時測定により、ヘアピンとV字型のセラミド(CER)のコンフォメーションの違いが、原因であることが明らかになった。 また、V字型CERのラメラ構造では、ラメラ構造の直方晶の比率が小さかった。角層のバリア機能を直方晶の比率は関連があると推察されていることから、細胞間脂質の充填構造の直方晶比を改善できる、すなわち角層のバリア機能を回復させる化合物の探索を試みた。先と同様に、CER、CHOL、PAからなる細胞間脂質モデルを調製し、角層の天然保湿因子成分に焦点を当て、アミノ酸とその誘導体について検討を行った。その結果、N-アセチル-L-ヒドロキシプロリン(AHYP)が極めて優れた効果を示す可能性が示唆された。ヒト角層の時間分解X線回折測定により、細胞間脂質のラメラ構造と炭化水素鎖の充填構造に対するAHYPの効果を調べたところ、炭化水素鎖充填構造の直方晶比に対するAHYPの直接的な物理化学的効果が示された。これらの実験結果から、AHYPは静電反発力を介して細胞間脂質の炭化水素鎖充填構造を維持し、皮膚バリア機能の改善に寄与する可能性が示された。得られた知見は、皮膚のバリア機能を維持に貢献するスキンケア製剤の開発に役立つ基盤情報になる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続きコロナ禍の影響が大きかったが、実施可能な実験を組み合わせて柔軟に対応した。皮膚のバリア機能をつかさどる微細構造のなかで、とくに重要と考えられている直方晶に着目して、セラミドの特性との関連を調べた。その結果、セラミドのコンフォメーションと充填構造の関連を明らかにすることができた。疾患角層では、セラミドの生成過程でコンフォメーション異常が生じる可能性もあり、あらたな実験の着眼点も得られた。当初の目論見通りではない一方で、より発展的にとらえることのできる研究結果が得られていることは、あらたな知見とともに大きな収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、最終年度になるため当初の目標のとおりに、疾患角層の解析を進める予定である。試料の収集など共同研究者の先生と協力して滞りなく進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
実験の順序を入れ替えたことなどに伴い、必要物品の購入が今年度に持ち越しになっている。今年度は計画した実験を滞りなく遂行する予定である。
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Research Products
(8 results)