2020 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性造血不全における新たな免疫回避機構による造血制御変容の基盤的解明
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20K08707
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
片桐 孝和 金沢大学, 保健学系, 助教 (60621159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 晃平 金沢大学, 附属病院, 助教 (10786239)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / iPS細胞 / HLA / 造血幹細胞 / 骨髄移植 / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性骨髄不全は、造血幹前駆細胞(HSPC)に対する自己の細胞傷害性T細胞(CTL)の攻撃が発端となって発症する造血不全である。本疾患の約14%では、HLA遺伝子領域を含む第6番染色体短腕(6p)において、片親性2倍体(Loss of heterozygosity, LOH)が認められ、その結果、特定のHLAアレルを発現できなくなった血球が検出される。この現象は、造血幹前駆細胞がCTLからの攻撃を回避した結果であり、6pLOH陽性HSPCに由来する様々な血球が末梢血中に存在している。本研究は、患者の末梢血において、6pLOH陽性HSPC由来の血球が、特定の分化経路へ偏重しているか否かを、フローサイトメトリー解析により明らかにするとともに、iPS細胞から誘導したHSPCを免疫不全マウスへの骨髄移植することにより作製した、「特定の表現型を有するヒト造血マウスモデル」を用いて、HSPCの新たな免疫回避手段と、それにともなう「造血制御の変容」を解明することを目的としている。 本疾患患者の末梢血を用いて、6pLOHを含む特定の表現型を有する血球の偏在の有無をフローサイトメトリー解析により精査した結果、T細胞やB細胞などのリンパ球系細胞よりも、顆粒球や単球などの骨髄球系細胞において、高い割合で6LOH陽性血球が認められた。また、それらの血球が陽性となる場合、ほとんどの例で骨髄球系細胞が陽性となっていることから、特定の表現型を有するHSPCの造血は、骨髄球系細胞への分化に偏重していることが示唆された。特定の表現型を有する患者の単球からiPS細胞を作製し、そこからHSPCを誘導することに成功しており、マウスモデルを用いたHSPCの機能評価へ向けて、準備ができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究では、6pLOH陽性HSPC由来の血球が、特定の分化経路へ偏重しているか否かを、フローサイトメトリー解析により明らかにすることを計画した。 これまでに、6pLOHにより最も欠失しやすいHLA-B*40:02遺伝子に着目し、シークエンシングによりこの領域を詳細に検討した結果、全体の75%がHLA-B*40:02欠失血球陽性であり、その80%ではHLA-B*40:02の機能喪失型変異によるHLA-B*40:02 単独欠失血球が検出され、変異を起こしたHSPCの造血は、クローンサイズとともに経時的に変化していることが明らかになっている。ただし、HSPCがCTLからの免疫学的攻撃を回避する手段として、未知の機構が存在する可能性が考えられた。実際に、6pLOHのハプロタイプに含まれないHLA遺伝子を保有し、かつ、HLA-B*40:02の機能喪失型変異を保有しない例のHLAクラスI領域をシークエンシングしたところ、特定のHLA遺伝子で新たな変異を同定した。本疾患では、HSPCがCTLから攻撃を受ける結果、HSPCが何らかの遺伝子変異を起こすことによりその攻撃を回避し、恒常的に造血が維持されていると考えられる。 このような、疾患に特有な血球の末梢血における分布については、これまで明らかになっていなかった。そこで、患者の末梢血を用いて、6pLOHを含む特定の表現型を有する血球の偏在の有無をフローサイトメトリー解析により精査した。その結果、T細胞やB細胞などのリンパ球系細胞よりも、顆粒球や単球などの骨髄球系細胞において、高い割合で6LOH陽性血球が認められた。また、それらの血球が陽性となる場合、ほとんどの例で骨髄球系細胞が陽性となっていることから、特定の表現型を有するHSPCの造血は、骨髄球系細胞への分化に偏重していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究では、患者末梢血において、6pLOHを含む特定の表現型を有する血球が偏在していることを明らかにした。また、iPS細胞の作製、HSPCの誘導、そして特有のphenotypeを有するヒト造血マウスの作製に成功した。作製したマウスを基にして、新規変異遺伝子陽性HSPCの自己免疫回避機序およびクローン性造血の動態を解明する。xenograftは、iPS細胞から誘導したHSPCを用いる。同定した新たな変異遺伝子をCRISPR/Cas9システムにより編集後、BRGSマウスへ移植し、変異特異的ヒト造血を再構築する。自身のCTLからの攻撃を回避した、それぞれの変異クローンによる造血の時間的変容を経時的に同定する。同時に、HSPCが新たに獲得した変異を同定するために、分離したHSPCのRNAシークエンシングを実施する。また、選択的な造血が発生しているマウス骨髄内のスポットを同定し、空間的なHSPCの挙動を同定することにより、特定の表現型を有するHSPCの時空的造血制御の変遷を明らかにする。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] HLA class I allele-lacking leukocytes predict rare clonal evolution to MDS/AML in patients with acquired aplastic anemia.2021
Author(s)
Hosokawa K, Mizumaki H, Yoroidaka T, Maruyama H, Imi T, Tsuji N, Urushihara R, Tanabe M, Zaimoku Y, Nguyen MAT, Tran DC, Ishiyama K, Yamazaki H, Katagiri T, Takamatsu H, Hosomichi K, Tajima A, Azuma F, Ogawa S, Nakao S.
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Journal Title
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Resistance of KIR Ligand-Missing Leukocytes to NK Cells In Vivo in Patients with Acquired Aplastic Anemia.2020
Author(s)
Nguyen MAT, Hosokawa K, Yoroidaka T, Maruyama H, Espinoza JL, Elbadry MI, Mohiuddin M, Tanabe M, Katagiri T, Nakagawa N, Chonabayashi K, Yoshida Y, Arima N, Kashiwase K, Saji H, Ogawa S, Nakao S.
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Journal Title
Immunohorizons
Volume: 4
Pages: 430-441
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A frequent nonsense mutation in exon 1 across certain HLA-A and -B alleles in leukocytes of patients with acquired aplastic anemia.2020
Author(s)
Mizumaki H, Hosomichi K, Hosokawa K, Yoroidaka T, Imi T, Zaimoku Y, Katagiri T, Nguyen MAT, Tran DC, Elbadry MIY, Chonabayashi K, Yoshida Y, Takamatsu H, Ozawa T, Azuma F, Kishi H, Fujii Y, Ogawa S, Tajima A, Nakao S.
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Journal Title
Haematologica
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Clonal Hematopoiesis By HLA Class I Allele-Lacking Hematopoietic Stem Cells and Concomitant Aberrant Stem Cells Is Rarely Associated with Clonal Evolution to Secondary Myelodysplastic Syndrome and Acute Myeloid Leukemia in Patients with Acquired Aplastic Anemia.2020
Author(s)
Kohei Hosokawa, Eiji Kobayashi, Yoshiki Akatsuka, Luis Espinoza, Noriharu Nakagawa, Tanabe Mikoto, Noriaki Tsuji, Takeshi Yoroidaka, Hiroki Mizumaki, Thi Mai Anh Nguyen, Takamasa Katagiri, Kiyomi Shitaoka, Hiroshi Hamana, Hiroyuki Kishi, Shinji Nakao,
Organizer
62th American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research
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