2021 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性造血不全における新たな免疫回避機構による造血制御変容の基盤的解明
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20K08707
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
片桐 孝和 金沢大学, 保健学系, 准教授 (60621159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 晃平 金沢大学, 附属病院, 助教 (10786239)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / iPS細胞 / HLA / 造血幹細胞 / 骨髄移植 / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性骨髄不全は、造血幹前駆細胞(HSPC)に対する自己の細胞傷害性T細胞(CTL)の攻撃が発端となって発症する造血不全である。これまでに、本疾患の約13%において、第6染色体短腕の片親性ダイソミーにより一側のHLAハプロタイプを欠失したloss of heterozygosity血球(6pLOH血球)が検出され、それらの血球がクローン性に造血を支持していることを世界で初めて明らかにした。HSPCがCTLからの免疫学的攻撃を回避する手段として上述のメカニズムが考えられたが、その他にも同様の免疫回避機構が存在する可能性が考えられた。実際に、6pLOHのハプロタイプに含まれないHLA遺伝子を保有し、かつHLA-B*40:02の機能喪失型変異を保有しない例のHLAクラスI領域をシークエンシングしたところ、特定のHLA遺伝子で新たな変異を同定したな血球が末梢血中に存在していた。本研究は、HLA欠失HSPCによる特異的な造血様態を解明するとともに、良性のHLA欠失HSPCと悪性HSPCによる造血を明確に鑑別する方法の確立を目的としている。 今年度の研究では、特定のケモカインに関連する分子のうち、造血に関与する分子(X)の発現が、末梢血中の非HLA欠失HSPCと比較してHLA欠失HSPCにおいて有意に低下していることを明らかにした。また、MDS症例および体細胞変異を有する自己免疫性骨髄不全症例においては、分子(X)の発現が非HLA欠失HSPCと比較して有意に亢進していることを見出した。次年度の研究計画に向けて、iPS細胞由来のHSPCを誘導し、骨髄移植により免疫不全マウスにおいて患者特異的造血を構築する準備ができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6pLOHにより最も欠失しやすいHLA-B*40:02遺伝子に着目し、シークエンシングによりこの遺伝子領域を詳細に検討したところ、全体の75%がHLA-B*40:02欠失血球陽性であり、その約80%ではHLA-B*40:02の機能喪失型変異によるHLA-B*40:02単独欠失血球が検出された。また、変異を起こしたHSPCの造血は、クローンサイズとともに経時的に変化していることを明らかにした。さらに、これらの変異HSPCの特性を明らかにするため、HLA欠失陽性患者の骨髄細胞を用いて、骨髄球系造血前駆細胞におけるHLA欠失分画と非HLA欠失分画との間で遺伝子発現解析を行った。その結果、複数のケモカインの発現に有意な差が存在することを明らかにした。これらのケモカインに関連する分子のうち、造血に関与する分子(X)の発現を解析した結果、HLA欠失HSPCにおける分子(X)の発現は著明に低下している一方で、非HLA欠失HSPCにおいては健常人コントロール同様の発現レベルであった。また、自己免疫性骨髄不全症例とMDS症例を対象とし、次世代シークエンシングにより体細胞変異の有無を解析し、複数のドライバー変異陽性例を同定した。これらの体細胞変異陽性症例およびMDS症例のHSPCにおける分子(X)の発現を解析した結果、分子(X)の発現は非HLA欠失HSPCと比較して有意に亢進していることを見出した。次年度の研究計画に基づき、特定の表現型を有する患者の単球から作製したiPS細胞を用いてHSPCを誘導し、骨髄移植により免疫不全マウスにおいて患者特異的造血を構築する準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究で、骨髄球系造血前駆細胞中のHLA欠失分画と非HLA欠失分画との間で遺伝子発現解析を行った結果、複数のケモカインの発現に有意な差が存在することを明らかにした。また、これらのケモカインに関する造血関連分子(X)の発現が、HLA欠失HSPCにおいて有意に低下していることを見出した。また、体細胞変異陽性症例およびMDS症例のHSPCにおいては、分子(X)の発現は非HLA欠失HSPCと比較して有意に亢進していることを明らかにした。次年度の研究では、HLA欠失陽性HSPCの造血における分子(X)の制御機能を解明することを計画している。CRISPR/Cas9システムによりHSPCの標的遺伝子を編集後、免疫不全マウスへ骨髄移植し、分子(X)による造血再構築への影響を検討する。免疫不全マウス体内における造血の再構築は、患者の単球から誘導したiPS細胞から誘導したHSPCを用いる。また、体細胞変異陽性HSPCおよびMDS症例のHSPCにおいても同様に分子(X)の遺伝子を編集し、免疫不全マウス体内で造血を再構築することにより、良性クローン性造血と悪性クローン性造血に対して分子(X)の及ぼす機能を明らかにする。さらに、マウス骨髄内の選択的な造血スポットを同定し、空間的なHSPCの挙動を同定することにより、特定の表現型を有するHSPCの時空的造血制御の変遷を明らかにする。
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Remarks |
https://ridb.kanazawa-u.ac.jp/public/detail.php?id=4033
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] The GPI-anchored protein CD109 protects hematopoietic progenitor cells from undergoing erythroid differentiation induced by TGF-β2021
Author(s)
Tanabe Mikoto, Hosokawa Kohei, Nguyen Mai Anh Thi, Nakagawa Noriharu, Maruyama Kana, Tsuji Noriaki, Urushihara Ryota, Espinoza Luis, Elbadry Mahmoud I, Mohiuddin Md, Katagiri Takamasa, Ono Masanori, Fujiwara Hiroshi, Chonabayashi Kazuhisa, Yoshida Yoshinori, Yamazaki Hirohito, Hirao Atsushi, Nakao Shinji
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Journal Title
Leukemia
Volume: 36
Pages: 847~855
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] The Copy Number of Disease-Associated HLA Alleles Predicts the Response to Immunosuppressive Therapy in Acquired Aplastic Anemia2021
Author(s)
Yoshitaka Zaimoku, Hiroki Mizumaki, Tatsuya Imi, Kohei Hosokawa, Hiroyuki Maruyama, Takamasa Katagiri, Takeshi Yoroidaka, Noriharu Nakagawa, Mikoto Tanabe, Noriaki Tsuji, Ryota Urushihara, Hiroyuki Takamatsu, Hirohito Yamazaki, Ken Ishiyama, Shinji Nakao
Organizer
63th American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Frequencies and clinical significance of HLA alleles in acquired aplastic anemia2021
Author(s)
Yoshitaka Zaimoku, Kohei Hosokawa, Takamasa Katagiri, Hiroyuki Maruyama, Tatsuya Imi, Hiroki Mizumaki, Takeshi Yoroidaka, Mikoto Tanabe, Ryota Urushihara, Noriaki Tsuji, Hiroyuki Takamatsu, Hirohito Yamazaki, Ken Ishiyama, Shinji Nakao
Organizer
第83回日本血液学会学術集会