2020 Fiscal Year Research-status Report
トロンボポエチン受容体作動薬ロミプロスチムの造血への影響とDNA修復効果の検証
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20K08708
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石山 謙 金沢大学, 附属病院, 講師 (60377380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 再生不良性貧血 / トロンボポエチン受容体作動薬 / ロミプロスチム / 体細胞遺伝子変異 / クロナリティ / WT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)であるエルトロンボパク(EPAG)またはロミプロスチム(ROMI)が奏効した再生不良性貧血(AA)患者における造血の質を明らかにするため、白血球の体細胞遺伝子変異によるクロナリティの検出頻度を、AA患者の検体を用いて検討した。2019年8月から2020年3月までの間に当院通院歴のある治療抵抗性のAA患者22症例において、骨髄異形成症候群(MDS)との関係が報告されている377遺伝子の標的シークエンスを末梢血DNAにて行ったところ、18%(4/22)で遺伝子変異が認められ、9%(2/22)に構造異常が認められた。EPAG投与後にKIT遺伝子変異が認められた1例においてはクローン性造血障害への進展の可能性が考えられたが、ROMI投与後にMDS関連の体細胞遺伝子変異が検出された症例は1例もなかった。また、TPO-RA投与後にはWT1 mRNAコピー数は上昇する傾向がみられたが、顕著に上昇が認められた症例はいずれも新たな体細胞遺伝子変異が検出されることはなく、MDSへの進展もみられなかった。KIT変異が検出された症例のWT1 mRNAはTPO-RA投与前から比較的高値であり、TPO-RA投与後に軽度上昇していた。これらのことから、TPO-RA投与がAA患者の造血幹細胞を刺激し治療効果が得られた症例においても、クローン性造血障害を誘発するリスクが高いとは言えないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TPO-RA治療を受けた患者の末梢血・骨髄の採取と造血幹・前駆細胞(HSPCs)における遺伝子発現解析、HLAクラスIアレル欠失血球、HLA-A/Bアレルにおける機能喪失型変異の検出は既に開始しており、今後も症例数を増やした上で検証していく。また、ROMIによるDSB抑制作用の検討に用いる患者検体は令和2年度までに収集しており、令和3年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
エルトロンボパクで報告されているようなDNA二本鎖切断(DSB)の抑制作用がROMIにおいても認められるかどうかを明らかにするため、臍帯血CD34陽性(CD34+細胞)及びiPS細胞由来のCD34陽性細胞(iCD34+細胞)を対象としてX線照射によりDSBを誘導し、造血因子存在下の液体培養中に見られるdouble strand breakage (DSB)に対してROMIが抑制作用を示すか否かを明らかにする。また、AA患者から得られた野生型iPS細胞由来のiCD34+細胞と、6pLOH(+)iCD34+細胞で造血を再構築させた免疫不全マウスにROMIを投与することにより、免疫学的な造血抑制機序が存在しない環境におけるHLA欠失HSPCsの動態とクローン拡大のメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大学内における行動が制限され、一部の研究を行うことができず予定通りの支出を行うことができなかった。 そのため、2020年度に行うことができなかった研究に必要な費用を、2021年度に使用する予定とした。
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Research Products
(2 results)