2022 Fiscal Year Annual Research Report
血液がんに関わるMMSETとヌクレオソーム複合体のクライオ電顕による構造解析
Project/Area Number |
20K08717
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 光 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90300962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MMSET / NSD2 / cryo-EM |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子転写を正に調節するヌクレオソーム修飾酵素MMSETのアミノ酸変異による酵素活性の異常な亢進は、多発性骨髄腫(MM)や急性リンパ性白血病(ALL)を引き起こす。本研究では、この酵素活性の異常亢進メカニズムを明らかにするためにクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法により、がん化変異を持つMMSET-ヌクレオソーム複合体の立体構造決定を行った。試料緩衝液の塩濃度、試料濃度、試料グリッド作製条件などを含めた試料調製方法全般の最適化を行いデータ取得及び解析を行ったところアミノ酸側鎖が観測可能な高解像度(2.8Å)での立体構造が得られた。この立体構造からMMSETはヌクレオソームと複合体を作ることによって単体構造から大きく構造変化を起こしていることがわかった。さらに、得られた複合体の立体構造を元にしたアミノ酸変異体の酵素活性測定実験、および活性が異常亢進したがん化変異体と正常な活性を持つ野生型のMMSETを分子動力学的なシミュレーションによって比較したところ、野生型に備わっている活性をオンオフするスイッチが、がん化変異体ではオフになりにくくなっており、このスイッチの制御機構の異常ががん化変異体の酵素活性異常亢進を引き起こすと推察された。 これまで解析に用いたMMSETは触媒活性を持つSETドメインに的を絞ったものであった。次のステップとして様々な制御を担うと考えられる部位を含む全長タンパク質を用いた解析を行うことを目指している。MMSET(NSD2)はNSD1,NSD2,NSD3から構成されるNSDファミリーのひとつである。現在、ソトス症候群の原因遺伝子であるNSD1の全長を用いた立体構造解析に取り組んでおり、昆虫細胞を用いた発現系の構築と予備的な精製方法の確立に成功しつつある。そこでMMSETについても同様の方法で解析を進めていくことを計画している。
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