2020 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病の変異FLT3のオルガネラシグナルとその理解に基づく治療戦術構築
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20K08719
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
安部 良 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20159453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 裕希 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20609408)
鈴木 利宙 帝京大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50530135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 変異型チロシンキナーゼ / FLT3-ITD / 細胞内局在 / 細胞内輸送阻害剤 / 細胞内分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia: AML) の約30%程度の症例で認められ、その大きな原因の一つとして知られる変異型FLT3チロシンキナーゼ (FLT3 internal tandem duplication: FLT3-ITD) が、細胞内の「いつ・どこで・どのように増殖シグナルを発信しているのか」を明らかにし、オルガネラ局在および安定化の分子機構の解明を試みる。そのために、(1) FLT3-ITDのオルガネラ局在・チロシンリン酸化のイメージング, (2) 共免疫沈降-質量解析, 阻害剤パネルによるFLT3の異常局在の原因分子群の同定, (3) 動物実験に用いることができる細胞内輸送ブロッカーのAML治療薬としての検討を試みる。 本年度は、上記のうち、主に (1) に取り組み、患者から樹立された複数種類のAML細胞株 (MV4-11, MOLM-14, Kasumi-6) において、FLT3-ITDが、細胞膜にはほとんど認められず、ゴルジ領域に停留することを見出した。コントロール細胞 (RS4-11等) の正常FLT3は、細胞膜に局在するため、ゴルジ停留は、変異型に特異的なものである。また、異なったITD変異体で共通してゴルジ停留が認められたため、停留はITD配列に依存しないことが示唆される。興味深いことに、FLT3変異体によるAKT, ERKの活性化はゴルジ体で、STAT5の活性化は小胞体で起きていることを示唆するデータを得た。抗チロシンリン酸化FLT3抗体によるイメージングをおこなったところ、サイトによって、リン酸化される細胞内位置が異なり、それぞれのシグナル活性化が、特定のオルガネラで起きることが示唆される。今後、上記 (2), (3) の課題をおこない、AML細胞内のシグナル伝達機構の正確な理解に繋げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、AML細胞におけるFLT3-ITDのオルガネラ局在・チロシンリン酸化のイメージングについて取り組み、患者から樹立され、ITDを有する複数種類のAML細胞株 (MV4-11, MOLM-14, Kasumi-6) における解析を試みた。コントロール細胞として、野生型FLT3を発現するTHP-1細胞, RS4-11細胞を用いた。免疫染色, 共焦点レーザースキャン顕微鏡を組み合わせた解析において、ITDを有する細胞において、FLT3は、核近傍領域に特徴的な集積を示し、その領域はゴルジ体の分布と一致した。正常FLT3は、主に細胞膜に局在するため、ゴルジ停留は、変異型に特異的なものである。また、異なったITD変異体で、共通してゴルジ停留が認められたため、停留はITD配列に依存しないことが示唆される。細胞内輸送ブロッカー (ブレフェルジンA, モネンシン等) 処理細胞のライセート, 免疫沈降物のイムノブロットによる解析により、興味深いことに、FLT3変異体によるAKT, ERKの活性化はゴルジ体で、STAT5の活性化は小胞体で起きていることを示唆するデータを得た。抗チロシンリン酸化FLT3抗体によるイメージングをおこなったところ、サイト (Y589, Y591, Y842, Y969) によって、リン酸化される細胞内位置が異なり、それぞれのシグナル活性化が、特定のオルガネラで起きることが示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、小胞体-ゴルジ領域でシグナル発信するための要件 (脂質ラフトの役割等) を検討する予定である。また、予備検討では、チロシンキナーゼ阻害剤 (tyrosine kinase inhibitor: TKI) であるミドスタウリン (PKC412) がFLT3-ITDの局在に影響を与えることを見出しているので、その他のTKI (レスタウルチニブ等) の検討, その詳細メカニズムの解明を試みる。さらに、共免疫沈降と質量解析法の組み合わせによる解析や、阻害剤パネル用いて、AML細胞におけるFLT3-ITDの局在異常の原因となる分子メカニズムの解明を試みる。それら解析から得られる知見に基づき、動物実験に用いることができる細胞内輸送ブロッカーを探索し、AML治療薬としての検討を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、研究室のロックダウンや学会が中止となり、主機関である帝京大学における研究の立ち上げ、進捗に支障をきたした。特に、病院との患者由来白血病細胞を用いた連携研究や化合物のスクリーニングについての連携研究について計画が大幅に遅れ、そのための研究費が不要となった。2021年度において引き続き緊急事態宣言が続く中ではあるが、2020年度に予定した研究費を利用し必要な試薬、資材を購入しWeb会議などを通じて連携研究を進めていく。
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Research Products
(1 results)