2020 Fiscal Year Research-status Report
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床検体シーケンスによる腫瘍内不均一性の解明
Project/Area Number |
20K08725
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日下部 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40804381)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 / 腫瘍内不均一性 / シーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
筑波大学附属病院(以下当院)血液内科診療データベースより、当院にて診断目的にリンパ節生検が施行され、かつ、病理組織診断がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と診断のついた症例を収集した。2015年1月から2020年12月までに診断された約450例のうち、新鮮検体より抽出したDNAが利用可能な症例は約80例であった。それぞれの症例についてリンパ節生検での組織型、化学療法の有無、化学療法への反応性、生命予後などの臨床情報を抽出し、解析を行う準備を進めた。今後、病理組織診断目的に保存されているFFPE標本からのゲノムDNAを抽出することを予定している。シーケンスライブラリを作製し、illumina社のMiSeqあるいはHiSeq 4000を用いてシーケンスする。シーケンス結果として出力されたfastqファイルは東京大学医科学研究所宮野悟研究室にて開発されたGenomon pipelineを用い、解析する。入力ファイルとしてfastqファイルを用い、変異情報であるvcfファイルを出力として得る。その変異情報とともに変異アリル頻度 (variant allele frequency: VAF)情報をパラメーターとして、MATH (mutant-allele tumor heterogeneity)というアルゴリズムを用いて腫瘍内不均一性の有無を判定する。このMATHの多寡と化学療法への反応性、無増悪生存、全生存などとの関係を検討することで、DLBCLの治療抵抗性、再発予測が可能であるかを検討する。本研究より、DLBCLという疾患群の中から腫瘍内不均一性という新たな観点からDLBCLの細分類を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筑波大学附属病院血液内科では2010年度以降、外来診療および入院診療を行った全ての患者情報が疾患名とともに診療データベースとして登録されている。本研究を行うにあたり、当院にて病理組織診断を目的としてリンパ節生検が行われ、かつ、病理組織診断がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL: Diffuse large B-cell lymphoma)と確定診断された症例をデータベースより収集した。2015年1月から2020年12月までにDLBCLと診断された約450例のうち、新鮮検体よりDNAを抽出し、MYD88 L265P変異などの解析を行った症例は約80例であった。これらの症例の残余DNAは再利用可能な状態で当院検査部遺伝子検査室に保存されている。病理診断目的に作成されたリンパ節のFFPE標本は当院病理部に保管されているため、新鮮検体からのDNAが利用できない症例についてはFFPE標本からDNA抽出を行うことが可能である。しかしながら検体固定からDNA抽出まで2年以上経過したFFPE標本から抽出されたDNAの品質を確認すると、DNAの品質を示すDNA integrity number (DIN)は2以下であることも多く、シーケンスには適さないことがわかった。 臨床情報としては、リンパ節生検での組織型の他にも細胞表面マーカー情報、染色体転座情報を収集する。また化学療法が施行の有無、化学療法のレジメン、化学療法への反応性、生命予後などの臨床情報を抽出し、解析を行う準備を進めることができた。先行研究では約50例のDLBCLでの解析であったため(Wang Y, et al., Carcinogenesis 2019)、本研究では100症例以上での解析を目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での解析候補となるDLBCL症例の臨床情報の収集およびDNA検体収集を進めている。 今後、標的シーケンスによりゲノム異常プロファイルの解析を行う。すでに当院検査部遺伝子検査室では2016年以降、年間約150件を上回るペースでMYD88 L265P hot spot変異の解析を行っている。これはサンガーシーケンスによる解析であるが臨床検体を材料とした標的シーケンスデータを現場に還元するシステムが確立している。本研究ではこの解析機能を拡張する形でIDT社のrhAmpSeq kitを用いてDLBCLにおいて頻度の高いゲノム異常に対する標的シーケンス(アンプリコンシーケンス)を行う。rhAmpSeq kitにより調整したライブラリはillumina社のMiSeqあるいはHiSeqによりシーケンスする。シーケンス結果として出力されたfastqファイルはスーパーコンピュータSHIROKANEを用い、東京大学医科学研究所宮野悟研究室にて開発されたGenomon pipelineにて解析する。入力ファイルとしてシーケンサーからのfastqファイルを用い、変異情報であるvcfファイルを出力として得る。次にその変異情報と変異アリル頻度 (variant allele frequency: VAF)情報をパラメーターとして、MATH (mutant-allele tumor heterogeneity)というアルゴリズムを用い、腫瘍内不均一性の有無(多寡)を判定する。このMATHの多寡と化学療法への反応性、無増悪生存、全生存などとの関係を検討することで、DLBCLの治療抵抗性、再発予測が可能であるかを検討する。本研究より、DLBCLという疾患群の中から腫瘍内不均一性という新たな観点からDLBCLの細分類を試みる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Molecular pathogenesis of progression to myeloid leukemia from TET-insufficient status2020
Author(s)
Shrestha R, Sakata-Yanagimoto M, Maie K, Oshima M, Ishihara M, Suehara Y, Fukumoto K, Nakajima-Takagi Y, Matsui H, Kato T, Muto H, Sakamoto T, Kusakabe M, Nannya Y, Makishima H, Ueno H, Saiki R, Ogawa S, Chiba K, Shiraishi Y, Miyano S, Mouly E, Bernard OA, Inaba T, Koseki H, Iwama A, Chiba S
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Journal Title
Blood Advances
Volume: 4
Pages: 845~854
DOI
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