2021 Fiscal Year Research-status Report
グルコース飢餓時における白血病細胞の新たな解糖系活性化機構の解明
Project/Area Number |
20K08735
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
齋藤 祐介 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20585674)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マンノース / 解糖系 / AML |
Outline of Annual Research Achievements |
AML細胞がグルコース飢餓時に解糖系を維持するためにグルコース以外の糖質を利用する可能性を考慮し、細胞外フラックスアナライザーを用いて白血病細胞に各種単糖類を添加し解糖系(ECAR)が上昇する糖質を同定した。AML細胞ではグルコースに加えてマンノースを解糖系エネルギー源として利用可能であった。マンノースはHKでマンノース-6-リン酸に変換され、次いでマンノース-6-リン酸イソメラーゼ(PMI)に代謝され中間体のフルクトース-6-リン酸に変換されたのち解糖系に利用される。骨髄性白血病でのマンノース代謝の意義を明らかにするため、安定同位体で標識したマンノースを慢性骨髄性白血病細胞株K562に取り込ませメタボローム解析を行った。標識したマンノースは解糖系からTCA回路やペントースリン酸経路に動員されエネルギー(ATP)を産生した。その一方でPMI発現を抑制した白血病細胞では、過剰な中間代謝産物(マンノース-6-リン酸)が蓄積し、解糖系代謝やOXPHOSを阻害しATPは枯渇した。次にグルコースをマンノースに置換した食餌を作製し、マンノースのin vivoにおける抗白血病効果を検討した。慢性骨髄性白血病急性転化のマウス白血病モデルで、マンノース食群はコントロール食と比較して生存期間が延長し、白血病細胞の解糖系活性およびOXPHOSの低下とミトコンドリア関連遺伝子群の発現低下を認めた。また、PMI抑制K562細胞をNOGマウスに皮下接種したゼノグラフトにマンノース食を与え15日後の腫瘍増殖を評価したところ、PMI抑制株のマンノース食群では腫瘍体積、重量ともに有意に減少した。マンノース代謝はグルコース飢餓時において白血病細胞の解糖系エネルギー源となる一方でPMI処理能力を超える過剰なマンノース負荷は白血病増殖を阻害する。PMI抑制とマンノース負荷は新たな白血病治療戦略となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
白血病細胞がグルコース飢餓状態でマンノースを利用して解糖系を維持すること、さらにPMIを抑制でマンノース負荷によりエネルギー代謝を阻害すること複数のマウス白血病モデル、ゼノグラフとで証明し論文報告を行なった。今後はPMI阻害とマンノース負荷を組み合わせたがん治療の開発を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
白血病細胞はPMI高発現であり、マンノースをエネルギー源として利用できる。マンノース代謝はPMIの発現と活性に依存しており、白血病のPMI処理能力を上回るためには莫大なマンノース負荷が必要となる。しかし、PMI活性を薬剤で阻害できれば輸液製剤のマンノース負荷で高い抗白血病効果を得ることができる。PMI阻害化合物を取得するためBINDSと連携してインシリコスクリーニングから標的化合物候補を取得し、PMI阻害スクリーニング(ELISA)と白血病細胞のマンノース代謝阻害スクリーニングを実施する。取得したMPI阻害候補化合物とマンノース負荷の併用による抗白血病効果を証明しPMI阻害候補化合物の創薬化を進める。
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