2021 Fiscal Year Research-status Report
Integrated analyses including general epigenetic analysis in pediatric acute myeloid leukemia
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20K08744
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
林 泰秀 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (30238133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外松 学 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (70251113)
河崎 裕英 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80278621)
山田 佳之 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80309252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 次世代シーケンサー / 網羅的メチル化解析 / ターゲットシーケンス / RAS関連遺伝子 / TP53遺伝子 / 7モノソミー / 予後因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児急性骨髄性白血病(AML)64例の網羅的メチル化解析を行い、Unsupervised cluster 解析では4つのクラスターに分類され、低メチル化群では既知の予後良好な遺伝子異常であるRUNX1-RUNX1T1, MECOM低発現のKMT2A再構成、中間メチル群ではCEBPA 両アリル変異などとの関連が認められ、高メチル化群の遺伝学的特徴は不均一であったが、予後不良例を抽出することに成功した。高メチル化で特徴づけられるクラスターは低メチル化で特徴づけられるクラスターと比較して著しく有意に予後不良であった。また、Supervised cluster 解析ではFLT3-ITD陽性AML症例内でDNAメチル化パターンによって予後の層別化が可能であった。FLT3-ITDの予後層別に関連したゲノム内の1243ヵ所のDNAメチル化サイトは、STAT5の結合モチーフと最も高頻度に重複しており、エンハンサー機能を持つ領域であることが示唆された。そこで、5例のAMLを対象にATAC-seqを行い、難治であったFLT3-ITD症例ではSTAT5の結合モチーフ内の低メチル化とクロマチンアクセス性が密接に関連していた。さらにPRDM16遺伝子の発現とDNAメチル化パターンの関連を調べたところ、一定の発現量を超えると劇的にメチル化パターンが変化していることを明らかにし、PRDM16高発現症例ではPRDM16自身のプロモーター領域が低メチルに維持され、gene bodyは高発現となっており、抑制性ポリコームとの結合が阻害されている可能性が示唆された。また、ATAC-seqではPRDM16高発現症例のみにプロモーター領域がopenとなっており、難治AMLにPRDM16遺伝子が深く関与していることが証明され、DNAメチル化解析が予後の予測に有用なbiomarkerであることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦の臨床試験であるJPLSG AML-05試験症例を対象にして、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析、網羅的メチル化解析とAML関連343遺伝子のTarget シーケンス解析を用いた統合的解析により、新規遺伝子をみいだし白血病の発症、進展機序の解明と新薬の開発を目指してきた。これまで成人のAMLではDNAメチル化パターンと細胞遺伝学的背景や予後との関連が報告されており.小児AMLにおいてもDNAメチル化パターンと分子生物学的異常や予後との関連について報告がされ始めてきた。 今回の研究はAML-05試験に登録された初発小児AML患者64例を対象に、genome-wideの網羅的メチル化解析を行い、小児AMLにおけるDNAメチル化パターンの臨床的意義や分子生物学的背景との関係性および予後との相関を比較検討した.その結果、特定のCpGサイトにおけるDNAメチル化レベルは、小児AML患者の遺伝子変化や遺伝子発現パターンを裏付けるのに有用であり、また、予後の層別に関しても有用であることが明らかになり、今後バイオマーカーとして臨床への応用が期待された.さらにメチル化の機序の解析を進め、PRDM16遺伝子の本体に高頻度にメチル化領域を認め、創薬にも応用可能であると思われた。さらにAML 64例でメチル化の機序の解析を進め、これらがPRDM16高発現の機序に関与することが推定され更なる解析を続けている。またt(9;11)-AMLにおいてメチル化のパターンで予後が分別できることを見出し、さらに症例を増やして検討を進めており、これらを通じてt(9;11)-AML の新たな分子標的治療薬を見出す検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
AML-05研究で343遺伝子のパネルシーケンスを用いて、これまで小児AMLでの報告が少なかったKMT2C、PHF6、TET2、MGA変異に着目し解析を行い、KMT2C、PHF6変異が予後不良と関連することを報告し(米国血液学会, 2021)、詳細を検討している。 今回の網羅的メチル化解析で興味深い結果が得られたので、この研究をさらに進め、新規遺伝子について機能解析等を行い白血病の発症と進展機序を明らかにする。特に網羅的メチル化解析でt(9;11)-AMLにおいて予後不良群を抽出可能な遺伝子群を見出しており、メチル化解析の症例をさらに64例増やして検討し、他の遺伝子との統合的解析により、t(9;11)-AMLの予後の指標を見出して治療法の決定に貢献し、さらに分子標的療法に通じる分子遺伝学的基盤を構築する。さらにt(9;11)-AMLとMLL再構成陽性AMLを30例を解析に加え関与する遺伝子を絞り込み、予後因子の抽出とその機序を検証する予定であり、世界でも最先端の成果が期待される。小児白血病の場合、発生や分化など生命現象に重要な遺伝子の変異が発症、進展に関与していることが多いことから、これらの小児AMLの発症機構の研究は、成人を含めたがん化のメカニズムを効率よく解明することが期待される。 さらに小児AMLにおける予後不良因子のひとつであるTP53、RB1遺伝子を多数の小児例で解析して臨床的意義を解明する。また、Monosomy 7は小児AMLの予後不良因子のひとつであり、成人AMLやMDS領域においても検討されているが、その責任遺伝子は長年の解析によってもまだ明らかになっていない。7番染色体上の遺伝子の詳細な解析により小児AMLにおける意義や他の分子生物学的背景との関連を検討し、新たな予後因子の同定とその意義について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はこれまでに行われていた研究結果の結果と臨床像の関係を検討し、次の研究をどう絞るかに労力をかけていたために次の研究に使われる研究費が残る結果になった。今年度の研究の概要、結果および今後の研究の進展の項にも記載したが、かなり研究が進展し、さらなる症例の蓄積と検証が必要になってきたので、次年度は研究費が沢山必要である。まずは網羅的メチル化の症例数を増やすためにキットを64例分を2回必要である。これらを通じて今年度判明したPRDM16遺伝子高発現の機序を明らかにしてその機序の解明を通じて新薬の創出に向かう予定である。また、網羅的メチル化解析でt(9;11)-AMLにおいて予後不良群を抽出可能な遺伝子群を見出しており、メチル化解析の症例をさらに増やして検討し、他の遺伝子との統合的解析により、t(9;11)-AMLの予後の指標を見出して治 療法の決定に貢献し、さらに分子標的療法を見出し、新薬の創出を目指したい。さらにt(9;11)-AMLとMLL再構成陽性AMLを30例を解析に加え関与する遺伝子を絞り込み、予後因子の抽出と細胞株を用いたin vitro の実験を行いその機序を検証する予定であり、可能であれば、さらにマウスを用いた実験も考えており、世界でも最先端の成果が期待される。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] 小児急性骨髄性白血病における全ゲノムDNAメチル化解析 -The JCCG-JPLSG AML-05 study-2021
Author(s)
1.大和玄季、河合智子, 柴 徳生, 原勇介, 大木健太郎, 鏑木多映子, 吉田健一, 白石友一, 宮野悟, ,小川誠司, 秦健一郎, 林泰秀。
Organizer
第83回日本血液学会
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