2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms of developing refractory leukemia
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20K08745
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野澤 真弘 北海道大学, 大学病院, 講師 (70455632)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | FLT3-ITD / ゲノム損傷修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)遺伝子の遺伝子内縦列重複(ITD)変異は急性骨髄性白血病(AML)の強力な予後不良因子であり、同種造血細胞移植によっても充分な予後の改善が得られていない。本研究ではFLT3-ITD変異の発生機序の解明を目指している。FLT3-ITD変異のクラスター領域をPCRで増幅し、アンプリコンを次世代シークエンス解析することで高感度(0.01%)のFLT3-ITD変異を定量的に検出が可能であることを確認した。AML臨床検体を用いた解析では、FLT3-ITD陽性症例に複数のFLT3-ITD変異が存在するだけでなく、ITD変異をもつクローンから、2箇所目のITD変異をもつ派生クローンが生じていることを明らかにした。また、FLT3-ITDが陰性と判定された症例にも低頻度のFLT3-ITD変異クローンが存在し得ることを解明した。FLT3-ITD変異のクラスター領域ではITD変異のみならず、欠失変異も起きており、変異塩基数が3の倍数となるin frame変異である時に、そのクローンが細胞増殖アドバンテージを持つものと考えられた。FLT3-ITD変異のクラスター領域のゲノム塩基配列は30bpの回文様構造をとっており、この部位を挟んでITDが起きやすいことを確認した。CRISPRによるDNA切断によって人工的にITD変異を作成できることを確認し、切断様式によるITDの生成効率の違いを検討している。これらの研究成果は臨床上AML細胞集団の中に複数のFLT3-ITDクローンが存在することや、初発時にFLT3-ITD陰性だった症例が再発時にFLT3-ITD陽性化することがあることの背景にあるバイオロジーを明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては複数の論文成果が期待できる結果が得られている。FLT3-ITD陽性症例の解析で明らかとなったFLT3-ITD変異があるクローンに2度目のITD変化が起きることによって生じる変異を"コンプレックスITD"と名付け、同部位のゲノム脆弱性がオリゴクローナルなFLT3-ITD変異の創出につながっていることの傍証として論文投稿中である。 臨床的なFLT3-ITD変異はコンパニオン診断薬(リューコストラットCDx FLT3変異検査)によって判断されており、この試薬ではFLT3-ITD変異割合が約5%以上のものを陽性と判断している。以前から初発時にFLT3-ITD陰性の症例が再発時には10%ほどがFLT3-ITD陽性となることが知られていた。本研究における初発時FLT3-ITD陰性AML症例の解析では、コンパニオン診断薬では検出できないレベルの微小FLT3-ITDクローンがFLT3-ITD陰性症例の3-4割に検出されることを見いだした。これらの微小FLT3-ITDクローンが再発時のFLT3-ITD陽性化に関わる可能性があり、当初予測していなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
予後不良因子であるFLT3-ITDは、FLT3-ITD陽性症例のみではなく、臨床的なFLT3-ITD陰性症例にも広く存在していることが明らかとなり、FLT3-ITDを生じることが予後不良に直結するものではなく、FLT3-ITDクローンが増える状況が予後不良を規定していると考えられる。我々は、ヒト、マウス細胞株を用い、CRISPRによるDNA切断によって人工的にITD変異を作成できることを確認しており、今後はどのような条件下で、どのようなFLT3-ITDクローンが増殖するのかを検討していく。 また臨床では、FLT3-ITD陰性AMLにおける微小FLT3-ITDクローンの存在が、再発時のFLT3-ITD陽性化(変異アリル頻度>5%)につながるのかどうか、初発時および再発時のペア検体で微小FLT3-ITDクローンの変異アリル頻度の動態を検討する。
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[Presentation] Highly sensitive FLT3-ITD detection by next generation sequence2021
Author(s)
横山翔大, 小野澤真弘, 髙橋承吾, 日高大輔, 藤澤真一,山本聡, 長谷山美仁, 永嶋貴博, 盛暁生, 太田秀一, 宮城島拓人, 柿木康孝, 黒澤光俊, 小林一, 井端淳, 近藤健, 豊嶋崇徳
Organizer
第83回日本血液学会学術集会