2020 Fiscal Year Research-status Report
悪性リンパ腫の多様性から解く臓器指向性の解明と新規治療への応用
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20K08751
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 和之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50631503)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん関連線維芽細胞 / エクソソーム / ヒストン脱アセチル化阻害薬 / ピリミジン拮抗薬 / 悪性リンパ腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、節性病変の微小環境を構成するがん関連線維芽細胞(CAF)より分泌されるエクソソームの役割の解明として、エクソソーム存在下において腫瘍細胞に対する耐性化が誘導される薬剤について検討した。難治性B細胞リンパ腫患者由来PDX(patient-derived xenograft)細胞に対して、361種類の小分子阻害薬より増殖阻害効果を示す46種類の薬剤を抽出し、さらにエクソソーム存在下において感受性が低下する6種類の薬剤を抽出した。6種類の薬剤のうち、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬に焦点を当て、複数のHDAC阻害薬について、エクソソーム存在下における感受性変化を検討し、エクソソームにより影響を受けるHDAC classを同定した。 これまでの検討において、CAF由来エクソソームがピリミジン拮抗薬の膜輸送タンパクの発現を抑制することにより、ピリミジン拮抗薬の腫瘍細胞への取り込みを阻害し、耐性化を誘導することを解明した。2020年度は、エクソソーム中のmiRNAに対するRNAシーケンスを行い、エクソソーム中に含まれるmiRNAを同定した。同定したmiRNAの中から、当該膜輸送タンパク遺伝子を標的とするmiRNAをデータベースより抽出した。抽出したmiRNAとエクソソーム中に多く含まれるmiRNAを精製し、各々のmiRNAの存在下において、膜輸送タンパクの発現変化およびピリミジン拮抗薬感受性について検討し、膜輸送タンパクの発現を抑制し、ピリミジン拮抗薬の耐性化の誘導に関与するmiRNAを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAFより分泌されるエクソソームの役割の解明と標的治療の開発については、エクソソームにより感受性変化がもたらされる薬剤を同定し、現在その中からヒストン脱アセチル化阻害薬に焦点を当て、感受性変化の背景にある分子学的機構について検討を加えている。さらにエクソソームの発現プロファイルの同定に関しては、エクソソームに含まれるmiRNAをRNAシーケンスにより同定した。さらに、ピリミジン拮抗薬の耐性化に関わるmiRNAを同定した。CAFによる腫瘍細胞への抗がん剤耐性化機序の一端を解明したと考えられ、今後の治療薬開発への展開が期待出来ると考えている。また、エクソソームの腫瘍微小環境への影響についても、エクソソームによる免疫細胞への影響について検討を開始しており、概ね順調に研究を進めている。 中枢神経病変形成機序の解明については、中枢神経病変に特徴的に発現するタンパクについて検討している。免疫染色における検討から、当該タンパクが有意に中枢神経病変に発現することを確認しているが、CRISPR-Cas9システムを用いて作成した当該タンパクのノックアウト細胞株では、野生株と比較してPDXモデルにおける腫瘍病変形成の相違について確認出来なかった。単独の遺伝子をノックアウトするだけでは、表現型の発現に至らないことも考えられ、現在、継続して当該タンパクの妥当性について検討を加えている。さらに、PD-L1を高発現する血管内リンパ腫については、PD-L1構造異常を標的とした新たな免疫療法の可能性を検討するための実験系を構築した。これらの観点から、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、エクソソームによる腫瘍微小環境への影響を明らかにするために、エクソソーム存在下における抗体医薬の感受性に焦点を当てている。エクソソーム存在下、非存在下における抗体医薬の感受性を、直接細胞死誘導作用、補体依存性細胞傷害活性、抗体依存性細胞傷害活性の各々の観点から検討する。感受性変化が認められた時には、背景にある分子機構について検討していく。 中枢神経病変形成機序の解明、血管内リンパ腫への新たな免疫療法の構築については、評価系の構築に取り組むとともに、病変形成や免疫療法の感受性に関する単細胞レベルでの解析を可能とするために、cell barcodingを応用した評価系の構築に取り組む。評価系の構築がなされた場合は、中枢神経病変を形成する細胞株をcell barcodingにて標識し、腫瘍形成部位の相違とクローン性や発現パターンの相違について検討を加えていく。
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Causes of Carryover |
単細胞レベルでの解析を可能とするためのcell barcodingシステムの構築に着手しているが、当該システムの完成が2021年度になることが見込まれること、当該システムを用いた検討に当該助成金を充当するために、次年度使用額が生じた。当該助成金については、2021年度に使用し、研究課題の遂行に用いる予定である。
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Research Products
(9 results)