2021 Fiscal Year Research-status Report
組織滞在型マクロファージの分化機構および生物学的機能の解明
Project/Area Number |
20K08752
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山根 利之 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (30452220)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 組織滞在型マクロファージ / マクロファージ / 卵黄嚢 / 造血発生 / 免疫発生 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体組織に存在する組織滞在型マクロファージは、胎仔期に存在する胚体外組織である卵黄嚢に起源し、造血幹細胞に依存せず末梢組織で自己複製していることが、近年の研究から明らかとされてきた。これまでに我々は、卵黄嚢においてマクロファージコロニー刺激因子受容体(CSF1R)陽性のマクロファージ前駆細胞を同定し、さらに最初期のCSF1R陽性マクロファージ前駆細胞は、胎仔型赤血球と共通の前駆細胞(以下、共通前駆細胞)から生じることを明らかとしている。
本研究課題は、卵黄嚢のCSF1R陽性マクロファージ前駆細胞の分化機構を明らかとするとともに、その生物学的機能を解明することを目的としている。本年度は、共通前駆細胞とCSF1R陽性マクロファージ前駆細胞の遺伝子発現パターンを調べ、その分化機能について転写因子制御の側面から解析を進めた。この解析から、CSF1R陽性マクロファージ前駆細胞では、転写因子PU.1の発現が共通前駆細胞に比べ、20倍以上に上昇することを見出した。実際に共通前駆細胞へのPU.1遺伝子の導入は、CSF1R陽性マクロファージ前駆細胞の形成を強く促進した。一方、転写因子GATA1の発現は、共通前駆細胞に比べ1/300程度に減少しており、GATA1の共通前駆細胞への導入は、CSF1R陽性マクロファージ前駆細胞の分化を強く抑制した。この結果は、PU.1とGATA1の相互抑制作用が、CSF1R陽性マクロファージ前駆細胞と胎仔型赤芽球の形成時に働くことを強く示唆した。現在、他の転写制御機構についても解析を進めており、今後、転写制御ネットワーク機能について統合的な理解を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、転写因子による分化制御機構について進展があり、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今度さらに、転写制御機構について解析を進めるとともに、卵黄嚢由来マクロファージの生物学的機能の解明も進めたい。
|
Causes of Carryover |
研究遂行に使用する標識抗体などの試薬を一部他の経費で賄ったため、一部、次年度へ繰越が生じた。生じた未使用額については、卵黄嚢由来マクロファージの生物学機能の解析に必要な試薬等、消耗品の購入に充てる予定である。
|