2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K08764
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
大澤 有紀子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (00816928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 文彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 教授 (50536216)
小林 真一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 講師 (50724655)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨髄線維症 / 線維化解除 / MMP-9 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性骨髄線維症は骨髄の線維化と髄外造血を特徴とする造血器悪性腫瘍であり、確立している根治療法は同種造血幹細胞移植のみである。移植を行うと骨髄の線維化は徐々に消失して解除されることから、線維化を構成するコラーゲンに対して何らかの分解機序が働いていると想定されるが、その機構は明らかになっていない。 我々は、トロンボポエチン受容体作動薬であるロミプロスチムを投与することで、骨髄の線維化を誘導するマウスモデルをすでに報告している。このマウスはロミプロスチムの追加投与を中止すると線維化が解除されるため、コラーゲンの分解機序を解明するモデルになると考え、詳細な分子機序を検討した。 C57BL/6マウスにロミプロスチムを1日目と8日目に投与して経時的に大腿骨をサンプリングし、骨髄の線維化は組織標本の鍍銀染色で評価し、骨髄細胞の遺伝子発現はRQ-PCRで解析した。その結果、線維化は13日目に極期に達した後、急速に解除され18日目には消失していた。コラーゲンの分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)は、線維化の経過と一致してmRNA発現が上昇していた。さらに線維化解除に対するMMP-9の影響を調べるため、MMP-9阻害薬を-2日目から4日おきに投与しつつロミプロスチムを同様に投与したところ、18日目でも線維化は残存していた。これらはMMP-9が線維化解除に寄与していることを示唆している。 次にMMP-9産生細胞を同定するために組織標本の免疫組織染色を行った。MMP-9とマウス好中球の特異的表面抗原であるGr-1は共局在していることが明らかになり、このことは好中球がMMP-9を産生していることを示唆している。 以上のことから、好中球の産生するMMP-9が骨髄線維化の解除に寄与する可能性が示された。上記所見は骨髄線維症にたいする新規治療法の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①大腿骨組織を用いて線維化の経過を評価し、線維化の極期と解除の時期を判明できた。 ②線維化解除に関与する分子機序として、単球由来の破骨細胞及びコラーゲンの分解酵素であるMMP-2,8,9の関与を検討できた。破骨細胞:破骨細胞を除去するクロドロン酸リポソームを投与しても線維化の経過には影響を与えなかった。このことから、破骨細胞が線維化解除を促進する可能性は考えにくいと判断できた。コラーゲン分解酵素:線維化の経過に一致してMMP-9の遺伝子発現量が変動していた。さらにMMP-9阻害剤の投与により線維化解除の遅延を観察できた。これらの結果から、線維化の解除機構にはMMP-9が関与していることを強く示唆できた。 ③大腿骨組織において、好中球の表面抗原であるGr-1とMMP-9の共局在を認め、好中球がMMP-9を産生していることを示唆できた。 上記の成果から、好中球が産生するMMP-9が骨髄線維化の解除を担っている可能性を示すことができ、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①G-CSF投与による線維化解除の促進または線維化解除の検討 In vitroにおいて、G-CSFは好中球によるMMP-9の放出を促進することが報告されている。このことから、G-CSFはin vivoでも同様の作用を誘導し、骨髄線維症の改善に寄与するのではないかという仮説を立てた。その検証のために、ロミプロスチムによる骨髄線維化マウスモデルにおいてG-CSFの投与を行い、線維化解除を促進させることができるか、または線維化を減弱させることができるかを検討する。 ②骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者の好中球におけるMMP-9及びTIMP-1の評価 既報の知見によると、MPNのドライバー変異であるJAK2V617F変異を有する細胞では、MMP-9の生理的阻害物質であるTIMP-1の発現が上昇している。また原発性骨髄線維症患者では、血清TIMP-1が有意に高いことが報告されている。これらを踏まえると、MPN患者では線維化解除における好中球の機能不全があると予測できる。検証実験として、MPN患者の好中球を用いてMMP-9およびTIMP-1の発現量をRQ-PCRで評価し、健常人の好中球と比較を行う。さらにはJAK2 V617Fトランスジェニックマウスの好中球でも同様の検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
組織標本染色と遺伝子解析が中心となり、フローサイトメトリー用蛍光標識抗体及びELISAキットを購入しなかった。国際学会への参加がオンラインだったため渡航費用が発生しなかった。以上の理由により次年度使用額が生じた。 次年度は線維化解除にたいする好中球の関与を詳細に検討するため、G-CSFの購入に使用する。
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