2021 Fiscal Year Research-status Report
A novel therapy targeting RP105-negative plasmablasts for refractory SLE
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20K08775
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
小荒田 秀一 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (50304887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 芳史 佐賀大学, 医学部, 准教授 (70284627)
丸山 暁人 佐賀大学, 医学部, 助教 (90508730)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形質芽細胞 / 自己免疫疾患 / 全身性エリテマトーデス(SLE) / 治療法 / B細胞 / BAFF / ベリムマブ / ステロイド治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性自己免疫疾患は難治性病態が存在し、その治療は立ち遅れている。最近、膠原病治療においてB細胞標的療法の重要性が提唱されているが、病的自己抗体産生形質芽細胞そのものを標的とした治療法が有用であると想定される。病的自己抗体産生形質芽細胞のみを標的とすれば、正常B細胞に影響を与えず、安全でより有効な治療となると考えられる。自己免疫疾患ではRP105陰性の特徴的な形質芽細胞のフェノタイプが存在することを研究代表者らはこれまで報告してきた。そこで、自己免疫疾患患者由来の病的形質芽細胞に特異的に発現する細胞表面分子を同定し、それを標的とする治療は、疾患特異的治療法となる可能性があり、その研究を遂行している。 まずSLE(全身性エリテマトーデス)患者および正常者の後期B細胞を抗CD19、CD138、RP105標識抗体により染色し、ナイーブB細胞、活性化B細胞、前形質芽細胞、形質芽細胞、後形質芽細胞、形質細胞の6つの分画の分布とその表面分子についてフローサイトメーターを用いて解析した。病的形質芽細胞特異的抗原を各種抗体を用いて、スクリーニングを行い、候補となる抗原を活動性時期、寛解期に分けて、解析を行った。さらにB細胞標的療法であるベリムマブ、リツキシマブの治療前後での形質芽細胞の変化について解析を行った。 その結果、BAFF-R、TACI、BCMA、IgD、CD27等のB細胞表面に発現する分子の分布に大きな変化があることが解明された。疾患活動性が高い時期のみならず、寛解期においても、その分布とフェノタイプの異常が存在することが解明され、病態の完治にはさらなる治療が必要であることが推定された。 現在、ステロイド治療、免疫抑制剤での治療、B細胞標的療法における細胞分画の分布に違い、フェノタイプの差について研究中であるが、有望な結果を得ており、さらなる研究につなげていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らはSLEやIgG4関連疾患(IgG4-RD)、ANCA関連血管炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎等の自己免疫疾患において、RP105陰性B細胞が増加し、B細胞の様々な分画がある中で病態に深くRP105陰性形質芽細胞が関与していることを解明した。これらのB細胞分画の分布とフェノタイプは疾患によって、違いが認められており、疾患でのB細胞の病態への関与の解明に役立つ成果が得られている。また、それぞれの疾患において活動期のみならず、治療効果が現れていると考えられる寛解期においても、患者によっては、その病態に応じて疾患特異的なB細胞が増加したままであったり、そのフェノタイプが特徴的な形質を有したままであることも解明した。この成果は今後、個別化医療の基礎となるデータとして利用あるいは臨床的な解析をまってさらなる治療への応用などの有用性が期待できる。 自己免疫疾患の治療には、ガイドライン等で大まかな治療方針は示されているが、ステロイド治療や免疫抑制剤による治療、あるいは抗サイトカイン療法などさまざまな治療法が存在し、その治療の選択、予測は実臨床では難しい。また、種々の抗体製剤間でのB細胞免疫への影響はあまり検討されていないのが現状であるが、今回、治療方法によってB細胞分画およびそのフェノタイプの変化の相異についてもその解明の糸口が得られてきている。今後、さまざまな自己免疫疾患に対しての治療による臨床的効果とB細胞の変化を比較検討することで、臨床効果の予測や副作用との関連性などについても解明していく端緒となりうると考えられる。 本研究を通じて得られたこれらの研究成果は2021年の日本リウマチ学会で詳細に報告した。また、2022年には海外出版社より、本研究を含めてSLEの臨床・病態に関する書籍を英文にて刊行しており、ひろく研究成果を海外へ普及、伝達することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SLEの病的自己抗体産生を行うRP105陰性形質芽細胞にのみ特異的に発現する抗原分子を同定することを第一の研究目的としているため、特異的抗原を探索し、治療標的として適切かどうかを今後、明らかにしていくという推進方策である。それと同時に臨床的に同分子の発現が疾患の活動性や病態とどのような関連があるのかを明らかにし、難治性の自己免疫疾患・希少疾患の今後の生物学的製剤などの新薬開発の基盤となる情報を集積していく方針である。 さらには、自己免疫疾患における患者あるいは疾患群の治療前後での形質芽細胞の細胞分画の分布とフェノタイプの変化を観察し、治療の間での差、個人での差などを検討し、今後の個別化医療への基礎となるデータについても収集していく。本研究で将来的に同定される可能性がある抗原分子への標的治療との相異を検討する際に比較できるデータも集積していく。 とりわけ、多重染色によるフローサイトメトリー法による解析は、B細胞の亜群を分別化でき、疾患ごとの真の病態の中心となっている細胞群を同定できる可能性がある。したがって、様々な抗体を組み合わせた解析を行い、疾患ごと、患者ごと、治療ごとのB細胞分画とそのフェノタイプの違い、変化を解析することで、真の治療標的を同定し、その細胞群を標的とした治療法の確立を目指している。 このことを目的として、将来的には、B細胞・形質芽細胞のフェノタイプから解析に適した抗体の組み合わせを選別し、その結果を用いてクラスター解析を行い、異常な形質芽細胞分画を同定し、さらにその細胞の詳細なフェノタイプを網羅的に同定していく。それと同時に治療や経過に応じた消長を検討していくことで病態への関与あるいは個人での病態の差があるのかを解明し個別化医療の開発を目指していきたい。最終目標は、疾患名による治療のみではなく、患者個人の細胞異常に基づく個別化医療の提供である。
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Causes of Carryover |
異動に伴い機器、解析資材等の研究体制の確立に本年度の前半は時間を要したため、研究の遂行に困難が生じたが、それにより研究体制を整えることができ後半より研究は順調に推移しており、次年度以降はさらに研究を確実に遂行することができる。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] 成人スチル病の治療 成人発症Still病(AOSD)のDrug-free寛解に影響する要因の解析2021
Author(s)
丸山 暁人, 石澤 彩子, 桐野 洋平, 山内 雄介, 井上 靖, 永井 秀人, 千布 裕, 小荒田 秀一, 中尾 嘉修, 堺 真梨子, 猪口 仁美, 大田 俊行, 大田 明英, 岩本 雅弘, 多田 芳史
Organizer
第65回日本リウマチ学会総会・学術集会
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[Presentation] 成人スチル病の特性 成人スチル病の重症度分類は予後予測に有用か2021
Author(s)
多田 芳史, 丸山 暁人, 石澤 彩子, 桐野 洋平, 山内 雄介, 永井 秀人, 井上 靖, 千布 裕, 猪口 仁美, 大田 俊行, 竹山 悠希子, 赤星 光輝, 小荒田 秀一, 大田 明英, 岩本 雅弘
Organizer
第65回日本リウマチ学会総会・学術集会
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