2021 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞による自己免疫疾患病態解明と新規創薬戦略の創出
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20K08800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
庄田 宏文 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20529036)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / iPS細胞 / インターフェロン / フラグメント分子軌道法 |
Outline of Annual Research Achievements |
疾患特異的iPS細胞を用いた全身性エリテマトーデス(SLE)病態研究、創薬研究を行っている。昨年度までに、姉妹SLE患者から疾患特異的iPS細胞を樹立し、またSLE姉妹の全エキソン解析によりOASL遺伝子多型を同定していた。今年度は、(1) iPS細胞のゲノム編集によるOASL遺伝子変異の機能解析、(2)インシリコによるOASL変異の構造予測を行った。 (1)については、OASL変異を有するSLE-iPS細胞株をゲノム編集によりOASL WTに修正することで、dsRNA刺激に対するI型interferon (IFN)産生が低下した。また健常人由来iPS細胞にOASL変異を導入すると、I型IFN産生が亢進した。以上より、SLE-iPS細胞株に存在するOASL変異は、dsRNA刺激によるRIG-Iを介したI型IFN産生を促進する機能があることがわかった。また、自然免疫系シグナルが亢進しているIFIH1活性型変異iPS細胞においても、上記と同様のゲノム編集によりOASL変異はI型IFN産生を促進していることを証明した。 (2)フラグメント分子軌道法により、OASLとdsRNAの結合についてインシリコで予測を行った。OAS WT-dsRNAと比較して、OASL変異型-dsRNAの結合のIFIE値は上昇(不安定化)していることが判明した。 以上の解析より、SLE患者で新規に同定されたOASL変異はI型IFN産生亢進作用があることがわかった。本解析の意義としては、SLEの遺伝的リスクについてrare variantの関与という新たな知見を得た点である。従来の大規模ゲノム解析ではSNPの解析が主であり、個々のrisk locusについての寄与は小さく、また頻度の低いvariantについては研究されていなかった。一方、従来知られている"monogenic lupus"とは単一遺伝子変異によるSLE(またはSLE様病態)である。今回の解析で、その中間程度の寄与力のrare variantがSLE発症に寄与している可能性が示唆された。本研究を通して、rare variantによるSLE病態形成への影響が明らかとなったた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLE-iPS細胞を用いたSLE病態解析の系は高い再現性をもって機能している。さらに新規rare variantsの同定と機能解析、構造予測に進むことができており、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
OASLのSLE患者における変異部位は、OASL機能に重要な位置に存在することが判明している。インシリコによる化合物結合スクリーニングにより、OASLの機能部位に結合する化合物を予測したうえで、in vitro、in vivoにおける薬剤の有効性研究を推進する予定である。
また、SLEデータベースから、OASLの他にもSLEと関連があると思われるrare variantsが複数同定されている。今後、SLE-iPS細胞を用いた新規rare variantsの機能解析を進める予定である。
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Research Products
(7 results)