2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular pathophysiology of food allergy in early childhood
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20K08809
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
玉利 真由美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00217184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田知本 寛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40256409)
岩本 武夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90568891)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 遺伝要因 / メタボロミクス / 症例対照関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は乳幼児発症食物アレルギーに焦点を絞り、遺伝要因およびメタボロミクス解析を行い、科学的な病態解明を行うことを目的とする。本年度はIL4R; rs3916997, rs6498004, CCDC80; rs12630906の3つの遺伝バリアントについて検討した。IL4Rは2型炎症において重要な役割を果たすIL-4、IL-13の受容体をコードする遺伝子であり、気管支喘息やアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患、2型炎症性疾患の治療に使用されるデュピクセントの治療標的分子である。また、対象としたIL4R; rs3916997, rs6498004はeQTLデータベース(ImmuNexUT: https://www.immunexut.org/)においてそれぞれCD16+ Monocyte,ナイーブ B細胞において強いeQTLを示している。またCCDC80; rs12630906は2021年に報告された日本人のアトピー性皮膚炎のGWASで同定されたCCDC80領域の原因SNPの候補rs72943976とr2=0.99の強い連鎖不平衡にあるSNPである。なお、rs72943976はCCDC80領域にある遺伝子調節領域の活性に影響するSNPの探索により同定された原因SNPの候補である。これらのSNPをPCR-RFLP法を用いてタイピングを行ない、食物アレルギーについて、症例対象関連解析(case 282例、control 1026例)を行なった。IL4R; rs3916997, rs6498004では関連が認められなかったが、CCDC80; rs12630906において有意な関連P=0.038 OR 1.23 (95%CI 1.01-1.49)を認めた。この食物アレルギーとの関連アレルの方向性はアトピー性皮膚炎と一致していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に倫理委員会より承認を受け、慈恵大学小児科外来を受診している乳児期発症食物アレルギー患者のサンプル収集を行なっている。令和2-3年度にかけて新型コロナウイルス流行により外来患者数の減少もみられ、新規患者におけるゲノムと血清のサンプル収集は目標よりも少ないが、令和3年度の後半から収集のペースは上がってきている。一方、専門医による診断を受け、経口負荷試験陽性または食物摂取後に明確な臨床症状を呈した食物アレルギー282症例(あいち小児保健医療総合センター)を活用し、コントロールとして日本人の公開データベース(JENGER; https://www.ims.riken.jp/databases/ims_db_ct/index.php )より取得した1026名のデータを用いてゲノム解析は順調に行われている。本年度の解析(有意水準P<0.05とした関連解析)において、IL4Rについてはrs3916997(A/G,) P=0.462, rs6498004(C/G) P=0.125,と有意な関連を認めなかったが、CCDC80; rs12630906(C/T) については(数字はアレル数、カッコ内は頻度)Control: C 1395 (0.68), T 657 (0.32), Case C 356 (0.63) T 206 (0.37), P=0.038と有意な関連を認めた。遺伝要因には人種特異性があるが、CCDC80はアトピー性皮膚炎の世界メタ解析において日本人の集団に特異的な関連領域であることが示されている。eQTLデータベースの検索では、rs12630906はメモリーCD8細胞においてCD200R1のeQTLであり、リスクアレルはCD200R1の発現低下の方向に働く。CD200は炎症反応抑制に関わる分子であり興味深い。今後も引き続き候補遺伝子のについて検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度もゲノムの抽出、ゲノム配列解析、ゲノム情報解析を行なっていく。サンプル収集時に臨床情報についても、耐性獲得状況、末梢血好酸球数、特異的IgE抗体(牛乳、鶏卵、小麦、魚卵、果物、ピーナッツ等)、総IgE等の収集を行う。2021年に、日本人の集団における免疫細胞のeQTLデータベース(ImmuNexUT)が拡充され、バイオバンクジャパンのサンプルを活用したPheWASの結果がBioBank Japan PheWebにおいて公表され(https://pheweb.jp)、アレルギー疾患においても気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎での大規模GWAS解析の結果が示された。 食物アレルギーのGWASの結果では、P<1x10-8をみたす5つのバリアント(EPAS1;rs1572620480, CDC14C;rs1269581244, PRKCE; rs542251783, FOXI1; rs1481522569, HECTD1; rs2074356)が示されている。これらの結果についてもアレル頻度による検出力、またエピゲノムデータベースや発現データ等を考慮に入れ、本研究のサンプル集団において、食物アレルギーとの関連について検討していく。また、メタボロミクスについては、データシェアリングも重要となる。近年バイオバンクの血清サンプルを用いて、血清検体で250種類のバイオマーカーが測定できるシステムが開発され、バイオバンクジャパンにおいても大規模メタボローム解析が予定されている。バイオバンクジャパンにおいてはパイロット解析が行われ、解析方法の検証が終了している。このシステムを使用すると、欧米人でのデータおよび日本人バイオバンクデータとの比較検討もできることから、このプラットフォームの活用についても検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
タイピングする遺伝バリアントは年度を超えて存在するため、次年度使用額42,470円については令和3年度に引き続き、本研究の遺伝子多型のタイピングに使用する予定である。
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