2022 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性アシネトバクターの重症化に関与する病原因子解明と新規治療法/予防法の開発
Project/Area Number |
20K08827
|
Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
斧 康雄 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (10177272)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 智 帝京大学, 医学部, 講師 (10409386)
永川 茂 帝京大学, 医学部, 講師 (50266300)
佐藤 義則 帝京大学, 医学部, 講師 (90455402)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アシネトバクター・バウマニ / 好中球 / チゲサイクリン / カルバペネマーゼ産生菌 / 迅速診断法 / セフィデロコル / 抗菌活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) A.baumannii (A.b)は好中球による殺菌に対し抵抗性がある。チゲサイクリン(TGC) は多剤耐性A. b(MDRA)の治療薬である。TGC存在下でMDRAは好中球により殺菌されやすくなるかどうか検討した。TGC添加群では非添加群に比べ、共培養6時間後に好中球による殺菌増強効果が認められた。好中球の活性酸素産生量や脱顆粒は、TGC添加群と非添加群ともに誘導が認められたが、両群に差はなかった。菌のカタラーゼ産生量と莢膜形成に関わる遺伝子発現量は、TGC添加2時間後で有意に減少した。またTGC添加4時間後のMDRAの莢膜の厚さは有意に減少した。TGCはMDRAに作用して病原因子の発現を低下させることで好中球の殺菌効果を高めることを明らかにした(Sato,Y: Infect Drug Resist. 2022)。 2)MDRAを含むカルバペネマーゼ産生菌(CPO)の検出方法としてのイムノクロマト迅速法の有用性を検討した。臨床分離株のKPC 21株、OXA-48 9株、NDM 17株、IMP 11株およびMDRPを含む合計59株のCPO を、SuperCARBA培地及びLB寒天培地上でコロニー形成させ、IMP株に対してはクイックチェイサーIMPを、KPC、OXA-48、NDM、VIM、及びIMP株に対してNG-Test CARBA5を用いた迅速検査法を実施した。どちらの方法も検討したCPOは全て陽性判定で、non-CPO 5株はすべて陰性で感度・特異度共に100%で、CPOの検出には両検査ともに有用と考えられた(Nishida S: Infect Drug Resist. 2022)。 3)新規抗菌薬セフィデロコルの当院分離MDRAに対する抗菌活性を測定し、良好な感受性を示すことを明らかにし学会発表した。 4)薬剤耐性菌の迅速検出法に関する基礎研究を実施し学会発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年4月から所属先の変更と教育・研究環境が大きく変化したが、2022年度は共同研究者とこれまで得られた研究結果の解析を継続実施した。課題に関する実験研究と並行して、論文執筆のための文献検索や論文執筆作業を実施し、国際誌に2報の論文が受理され公表できた(詳細は研究実績の概要及び論文参照)。また、国内関連学会において本研究課題に関して学会発表を実施した(後述の学会発表参照)。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 好中球や単球・MΦと多剤耐性A.baumannii(MDRA)との相互作用から本菌の病原性を解明する: 特に、A.baumanniiは莢膜保有菌で、その貪食には莢膜特異抗体が必要であるが、莢膜欠損株やOMP欠損株、LPS欠損株を作成し食細胞による貪食作用の違いがみられるか野生株と比較して検討する。抗菌薬処理後の食細胞の貪食殺菌能に及ぼす影響についても検討する。 2) A.baumanniiのバイオフィルム形成能に関する分子機構を詳細に解析する。 3) 当院や諸外国で分離されたMDRAの全ゲノム解析を実施し、病原因子に関わる遺伝子の解析を行う。 4) MDRAを含む薬剤耐性菌の病院感染拡大を予防するために、耐性菌迅速検出法の開発に向けた基礎的研究を実施する。 5) MDRAに対する新規抗菌物質の探索を継続すると共に、既存抗菌薬の併用療法に関する基礎研究を実施する。
|
Causes of Carryover |
2021年度以降、職場変更による移動で研究環境が大きく変化した。本年度は、研究試薬や培養培地などの物品購入や学会参加発表などに助成金を使用させていただき、昨年同様に2つの英文論文を国際学術雑誌に掲載できた。しかし、残りの研究課題に対しての論文作成には更なる追加実験が必要であり、本年度はコロナ禍で研究時間の制約があり、研究費を次年度に残す必要が生じた。また、2023年度は、共同研究者の一人が当大学に移動になるため、研究環境を整える必要が生じ、試薬や研究備品の購入を予定している。本年度も研究成果の公表や最新の情報収集のために学会に参加するとともに、研究用の試薬類や物品購入、遺伝子解析のために研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(10 results)