2022 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌定着におけるtype 1 pilusの関与の解明と予防・治療への応用
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20K08828
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
宮崎 治子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10527948)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | type 1 pilus / 肺炎球菌 / 付着因子 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌は現在100種類の血清型が報告されており、肺炎球菌定期接種開始後、ワクチンに含まれない血清型による感染症の割合が増加している(血清型置換)。私達が臨床材料から収集した肺炎球菌株の検討で最も多く分離された非ワクチン血清型35Bは、RrgC遺伝子(RlrA isletにコードされる繊毛 type 1 pilusのサブユニット)を高率に保有しており、また、rrgC陽性株はペニシリンのMICが1μg/mL以上の株で高頻度であった(Miyazaki H, et al., 2020)。Piliは気道上皮細胞に結合する付着因子であり、宿主の炎症反応を惹起すると報告されているが、病原性への関与や薬剤に対する影響はまだ不明な点が多い。そこで、血清型35Bにおけるtype 1 pilusの定着における働きと薬剤耐性化への寄与の解析、およびpilus発現抑制薬による定着予防および治療を目的として研究を行い下記の結果を得た。 臨床分離35Bのうちtype 1 pilus遺伝子を持つのはclonal complex(CC)558の株であった。80株のCC558を用いてA549肺胞上皮細胞への付着率を比較検討し、付着性が高い株を選択し、相同組み換えを用いてpilus欠損株を作製して細胞付着性や薬剤感受性を比較した。(1) 細胞付着性: A549細胞を培養し、親株およびpilus欠損株を加え、反応後に付着率を測定した結果、株により程度差があるが欠損株では付着率が低下することが示された。(2)pilusが薬剤感受性に与える影響の評価: 親株および欠損株を用いて各種抗菌薬の薬剤感受性を測定した結果、明らかな差異を認めなかった。35B/ST558の薬剤耐性機序へのtype 1 pilusの明らかな関与はないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
type 1 pilus遺伝子を有する35B/CC558収集株の中から付着性が高い株を選択し、pilus欠損株との比較実験を行ったが、35Bの付着におけるtype 1 pilusの関与は、引用した標準株TIGR4の報告ほど明らかなものではなかった。そのため有意差の確認に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
【令和5年度】1. Pilus制御機構の検索:定量RT-PCRを用いて、rrgC発現を制御する物質や分子を探索する。 2.これまでの検討によって、1)非ワクチン血清型の中でも血清型35Bの検出が定期接種開始後に増加した原因としてtype 1 pilusにより定着しやすいことが関与するのか 2)pilus発現抑制による定着予防、治療が期待できるか、という問いに対する考察を行う。 3.総括・発表を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画に沿って実験を開始したものの遅れが生じたため、予定していた実験に必要な費用のうち一部を使用できなかった。また、学会発表や論文作成も遅れたため、研究期間の延長を申請し令和5年度に次年度使用額を使用して実施する計画である。
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