2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on mechanisms of rubella virus infection to the fetus, possible alternative cellular receptors and factors affecting the virus infection
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20K08829
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 准教授 (30513858)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 風疹ウイルス / ヒト不死化絨毛細胞HTR-8 / SVneo細胞 / 小胞体ストレス / 感受性 / A549 / 上皮間葉転換 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
1/.小胞体ストレスはヒト不死化絨毛細胞HTR-8 / SVneo細胞やSw71細胞を風疹ウイルス感受性にする研究:風疹の経胎盤感染は臨床的に重要な問題であるが、その機序は不明である。令和2年度の研究では、不死化ヒト絨毛細胞HTR-8/SVneo・Sw71細胞を低グルコース(0.5 mM)や高グルコース(25 mM)など様々な小胞体ストレス処理した後にMOI 5~10 で、風疹ウイルス(臨床分離株)に感染させた。感染後24時間および48時間後(hpi)に、蛍光顕微鏡で風疹ウイルスカプシドタンパク質の局在を確認し、培養液中でのウイルス抗原を定量した。また、ウイルスRNAを定量した。HTR-8/SVneo細胞のアポトーシスをフローサイトメトリー(FCM)で検討した。その結果、未処理の不死化ヒト絨毛細胞HTR-8/SVneo・Sw71細胞には風疹ウイルスは感染しえないが、小胞体ストレスを受けることによって、24 hpiより、FCMで、48 hpiでは蛍光顕微鏡でウイルス抗原が染色された。しかし48 hpiにおいても風疹ウイルス感染細胞の有意なアポトーシスの増加は認めなかった。上清中へのウイルスの粒子の産生は24時間から5日間継続して認められた。
2/.栄養膜細胞への風疹ウイルス感染における上皮間葉転換(EMT)関与に対する研究:ヒト肺胞上皮由来である A549細胞でTGF-β添加によりEMTが誘導され、風疹ウイルス(臨床分離株)に感染させた。感染後24時間および48時間後に、FCMでウイルス感染率を検討し、培養液中でのウイルス抗原を定量した。その結果、風疹ウイルスの感受性を上昇したことを認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栄養膜細胞への風疹ウイルス感染における上皮間葉転換(EMT)関与に対する研究についての結果は、ヒト肺胞上皮由来である A549細胞でTGF-β添加によりEMTが風疹ウイルスの感受性を上昇したことを認め、以上の結果を学会で発表・報告し、国際ジャーナルで公表した。
感受性及び非感受性細胞への風疹ウイルス感染に影響を与える可能性のある要因についての研究には、小胞体ストレスがヒト不死化絨毛細胞HTR-8 / SVneo細胞とSw71細胞を風疹ウイルス感受性にすることを認めた。従来、胎盤の細胞は風疹ウイルス非感受性と考えられてきたが、特定の条件では風疹ウイルスに感染し持続的にウイルスを産生する。我々の知見は、高血糖や炎症など妊娠中の小胞体ストレスがtrophoblastを風疹ウイルス感受性に変換することを明らかにした。風疹の子宮内感染機序の解明に一石を投じる可能性がある。以上の結果を学会で発表・報告した。
以上のことから、初年度に予定した実験は概ね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
感受性及び非感受性細胞への風疹ウイルス感染に影響を与える可能性のある要因についての研究:令和2年度の研究の結果では、小胞体ストレスがヒト不死化絨毛細胞HTR-8 / SVneo細胞を風疹ウイルス感受性にすることを認めたので、今年度は以上の結果の公表を進める予定である。今後の研究には、そのメカニズムを解明する。また、酸化ストレス、栄養飢餓、炎症などはウイルス感染に影響を及ぼす可能性があるため、これらの負荷を栄養膜細胞にかけた状態で、風疹ウイルスの感受性を評価する。
栄養膜細胞への風疹ウイルス感染における上皮間葉転換(EMT)関与に対する研究:令和2年度の研究の結果では、ヒト肺胞上皮由来である A549細胞でTGF-β添加によりEMTが誘導され、風疹ウイルスの感受性を上昇したことを認めたので、今後の研究には、そのメカニズムを解明する。
風疹ウイルスの細胞受容体についての研究:受容体候補は、1)文献レビューとその後の予備実験から得られた結果の解析、2)マイクロアレイによる感受性細胞株と非感受性細胞株における遺伝子発現の差を解析し、細胞膜タンパク質遺伝子転写の比較による候補スクリーニング、3)E1および/またはE2風疹ウイルスのキャプシドタンパク質に結合する細胞表面タンパク質の同定を通じ、総合的に検討する。またそうして得られた候補の検討には、候補受容体タンパク質の強制発現による感受性の評価、候補受容体タンパク質に対する特異抗体によるブロッキング、またはsiRNAによるサイレンシングにより、生物学的意義を検証する。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和2年度の研究成果のうち、小胞体ストレスがヒト不死化絨毛細胞HTR-8 / SVneo細胞とSw71細胞を風疹ウイルス感受性にすることやヒト肺胞上皮由来である A549細胞でTGF-β添加により上皮間葉転換が風疹ウイルスの感受性を上昇したことを分かってきた。令和3年度は,前年度の実験に引き続き、そのメカニズムを解明に多くの試薬や実験キットの購入が必要と考えられるため,研究費の多くをこれらの消耗品の購入に充てる予定である。さらに研究結果の公表のための英文校正サービスや論文発表などの費用が必要となる。 (使用計画) 上記の通り令和3年度は,試薬や抗体、ELISAキットなどの購入が必要と考えられるため、研究費の多くをこちらの消耗品の購入に充てる予定である。また、残額は研究結果の公表代金に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)