2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K08841
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森本 浩之輔 長崎大学, 熱帯医学研究所, 特定教授 (50346970)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 保菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年冬期より準備をすすめ、市中病院で研究対象症例の登録を開始した。当初順調に症例登録を行ったが、2020年2月以降に生じた新型コロナウイルスパンデミックにより、新型コロナウイルス以外の病原体による肺炎患者が減少し、また新型コロナウイルス感染者の急増により市中病院が多忙となったこと、感染対策上書面で同意を取得して研究のために咽頭ぬぐい液を採取することが事実上不可能になったことで滞った。2023年初めの感染拡大と縮小を経て、研究の再開を計画しているが対象症例数は依然として少ないと推定され、研究計画書の見直しにも着手した。 この間、肺炎球菌の口腔内における保菌をPCRで効率よく検出する方法を開発した。唾液の中には肺炎球菌PCRにおいて一般的に使用されるターゲット遺伝子であるlytAは、他の連鎖球菌でも陽性となりうることがわかっており、より精度を上げるため他に二つの遺伝子piaBとSP2020を新規multi-plex PCRシステムに実装した。今年度はこの有用性を陽性コントロールと肺炎球菌近縁の連鎖球菌、実際の検体を用いて検証した。これに加え、血清型特異的な遺伝子も、肺炎球菌以外の連鎖球菌で陽性となることが指摘されており、前述の肺炎球菌PCRの遺伝子との組み合わせによる検査特異性の向上に取り組んだ。 また、 高齢者では小児とは異なり口腔内の肺炎球菌の保菌菌量が少なく、検出しにくいことが知られてきている。検出感度を上げるため 一度検体を血液寒天培地で培養し、生育した菌を集めて検体とし、PCRによって検出する方法を試した。しかし、同一人物の唾液検体のPCRを対照として比較したところ、結果として培養により増菌した方が感度が低いことがわかった。培養過程で肺炎球菌の増殖が他の菌により阻害される可能性が示唆され、DNAの抽出効率を上げるため酵素Xと界面活性剤を使用することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、医療機関において研究への協力が得られないこ、感染対策上同意取得や検体を収集することが難しいことが挙げられる。また、研究対象となる新型コロナウイルス以外の病原体による感染症が激減していることも理由として重大である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染が一定程度落ち着き感染症法上の取り扱いの見直しにより、一般的な病原体による肺炎が増加したタイミングで再開を計画している。症例登録の中断によって研究協力体制が機能しなくっているため、もう一度構築し直す必要がある。 また、代替案として、高齢者が多く入院する医療機関において、入院時の咽頭・口腔病原体とその後肺炎を発症した場合の起炎病原体との対比を行うことにより、本課題の研究目的を達成できるかを検討する。実現可能性があると判断されれば、倫理委員会での研究計画書の審査を経て、実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療機関において研究への協力が得られないこと、感染対策上同意取得や検体を収集することが難しいことから予定通り研究が遂行できなかったため予算執行も滞った。この間、本研究課題に使用する病原体検出システムを改善することなどの試薬代で一定程度使用したが、次年度使用額が生じた。次年度は、新型コロナウイルス感染症が収束し、より効果的な研究の構築を試みることで前年度まで想定していた予算の使用が見込まれる。
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