2021 Fiscal Year Research-status Report
鼻咽頭定着の制御に基づく新たな肺炎球菌感染症予防法の開発
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20K08848
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
中村 茂樹 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20399752)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 鼻咽頭定着 / NKT細胞 / 線毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで使用していたNKT細胞KOマウス(Jα18 KO)において、NKT細胞以外の一部のT細胞にも影響が出ることが判明したため、2016年に理化学研究所で新たに樹立されたNKT細胞KOマウス (Jα18 KO)を購入し、これまでの研究成果の再現性について確認実験を行った。 肺炎球菌の鼻咽頭定着マウスモデルを用いて、野生型マウス (8週齢, 雄)およびNKT細胞KOマウスに対し、マウス鼻咽頭へ効率かつ長期に定着する肺炎球菌P1121株 (1X109 CFU/mL)を経鼻感染させ、14日後と21日後に鼻腔洗浄を行い、鼻咽頭定着菌数の経時的推移を評価した。その結果、これまで認められていたNKT細胞KOマウスにおける感染21日後の鼻咽頭定着菌数の有意な増加が認められなかった。次にNKT細胞のリガンドであるα-ガラクトシルセラミド (2μg/匹)を肺炎球菌感染前、感染3日後、感染14日後に腹腔内投与し、肺炎球菌感染21日後の鼻咽頭定着菌数を確認したところ、やはりこれまでと異なり感染21日後の定着菌数の低下が認められなかった。 さらに上記研究と同時進行として、肺炎球菌の鼻咽頭定着をも制御可能な新規ワクチン抗原として、肺炎球菌表面の線毛 piliの有用性について検討するため、まずpiliの鼻咽頭定着における役割を確認すべく、pili欠損株の作成とpiliタンパクのクローニング・抽出作業を進めている。これまでにゲノムDNAから増幅したターゲット遺伝子のDNA断片をTA cloningし、E. coli DH5αに形質転換し、PCR断片とエリスロマイシン耐性遺伝子とつなぎ合わせ作成した遺伝子破壊用DNAを肺炎球菌に形質転換し、エリスロマイシン含有培地に発育させることで遺伝子破壊株を選択・獲得することができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来使用していたNKT細胞KOマウスでは、鼻咽頭定着マウスモデルにおいて肺炎球菌P1121株感染後3日目、7日目、21日目の鼻腔定着菌数を解析した結果、野生型マウスと比べ21日後の鼻咽頭定着菌数の有意な増加が認められた。さらにNKT細胞のリガンドであるα-ガラクトシルセラミド (2μg/匹)の腹腔内投与によって、感染21日後の鼻定着菌数の有意な低下が認められたことから、肺炎球菌の鼻咽頭クリアランスにおいてNKT細胞の関与が考えられた。 しかし、これまで使用していたNKT細胞KOマウス(Jα18 KO)はNKT細胞以外の一部のT細胞にも影響が出ることが判明したため、2016年に理化学研究所で新たに樹立されたNKT細胞KOマウス (Jα18 KO)を購入し、これまでの研究成果の再現性について確認実験を行った。その結果、これまで認められていたNKT細胞KOマウスにおける肺炎球菌感染21日後の鼻咽頭定着菌数の有意な増加が認められず、さらにNKT細胞のリガンドであるα-ガラクトシルセラミド (2μg/匹)の腹腔内投与においても、感染21日後の鼻咽頭定着菌数の低下が認められなかった。想定外の結果であるが再現性が得られない原因の検索が必要であり、研究の進捗がやや遅れていると考えられる。ただし、鼻咽頭定着に関与が考えられる病原因子piliの欠損株作成には成功しており、その機能解析やタンパクのクローニングの準備は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
NKT細胞KOマウスを用いた研究について、再現性が得られない理由がマウスの変更によるものなのか、実験手法の違いによる影響なのか明らかにするため、既に多くの先行研究で明らかとなっている肺炎球菌の下気道感染に対するNKT細胞を介した感染防御について、侵襲性の高いD39株を用いた生存率解析を行い確認する。既報通りであればNKT細胞KOマウスで野生型マウスと比較し生存率が低下するはずであるが、もしその再現性までも得られなかった場合は、研究手法の問題点(菌株の病原性変化も含めて)について詳細を検討する。 また、線毛タンパクをワクチン抗原とした新規ワクチン開発について、線毛遺伝子破壊株を用いた機能解析として①肺胞上皮細胞A549 cell lineによるin vitro実験系を用いて野生株およびpili遺伝子欠損株の細胞接着性の評価、②鼻咽頭定着マウス感染モデルによるin vivo実験系を用いて、野生株およびpili遺伝子欠損株の鼻咽頭定着菌数を評価する。 またpiliタンパクのクローニング・精製、およびマウスに精製piliタンパクを接種した後の免疫原性の評価を行う (アジュバントの併用については適宜検討する)。NKT細胞KOマウスで定着菌数に有意差が認められなかった場合でも、NKT細胞のリガンドであるαガラクトシルセラミドがワクチンのアジュバントとなる可能性も考慮し、piliタンパクと同時接種を行い免疫原性の評価および鼻咽頭保菌の抑制効果について検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入量を予定より軽減することができたため次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は翌年度分と合わせ、感染動物実験に使用するマウスの購入費や維持費、線毛タンパク抽出・精製および免疫原性の評価に必要な試薬や消耗品の購入費として適切に使用する。
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