2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒトES細胞・iPS細胞を用いた視床下部神経幹細胞の創出
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20K08859
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須賀 英隆 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20569818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト多能性幹細胞 / 視床下部 / 幹細胞 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトES/iPS細胞から視床下部神経幹細胞への分化誘導法を確立し、この細胞が神経幹細胞として機能することを示す。以下の3項目を並行して進めている。 項目A. ヒトES細胞のRax::Venusノックイン株を用いて視床下部神経幹細胞を単離、同定:2020年度は、ヒトES細胞を用いた視床下部神経への分化プロトコールを改良してRax持続陽性細胞を増やし、Venusを目印にcell sorterで分離採取したRax持続陽性細胞に神経幹細胞マーカーが発現していること、また、sortした細胞を接着培養することにより視床下部神経やグリア細胞へ分化することを確認した。2021年度は、分取したヒトES細胞由来Rax持続陽性細胞を用いてneurosphereを形成する培養条件を最適化、次にneurosphereを継代可能とした上で、継代後のneurosphereに視床下部神経幹細胞としての多分化能が維持されていることを示した。以上により、in vitroでの視床下部神経幹細胞としての性質を証明したといえる。neurosphereの凍結保存は可能としたものの細胞生存率がまだ低く、今後の改良が必要である。 項目B. 表面抗原を検索し、ノックイン細胞でなくとも視床下部神経幹細胞を単離可能にする:ヒトES細胞(Rax::Venusノックイン株)由来視床下部組織よりVenusを目印にsortしたRax持続陽性細胞の表面抗原を網羅的に解析することで、ある程度特異的な表面抗原を同定した。今後、ノックインされていない野生型のヒトES/iPS細胞でこの表面抗原が機能するか検討を進める。 項目C. 動物移植により、生着と視床下部神経への分化を証明する:短期間で繰り返し実験の行いやすいマウスES細胞を利用して移植の基本技術を確立した。 今後、ヒトES/iPS由来Rax持続陽性細胞での移植実験に移行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目Aについて、今年度はneurosphereの自己複製能と多分化能をin vitroで検討した。まずneurosphereをシングルセルに分散し96well plateで浮遊培養したところneurosphereが再凝集、すなわち継代に成功した。継代は神経幹細胞マーカーやRax::Venus陽性を維持しながら複数回可能であった。継代時に緩やかな細胞数増加を認め、Rax::Venus陽性細胞neurosphreは自己増殖能を持つことも判明した。続いてneurosphereをシングルセルに分散して平面培養し細胞成熟を促したところ、成熟ニューロンマーカーであるMAP2、NEUN、Tubulinβ3が陽性、かつ腹側視床下部弓状核のPOMCとNPYが陽性であった。アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化も確認した。以上よりRax::Venus陽性細胞は視床下部神経幹細胞の性質を持つことを in vitroにて明らかにした。 項目Bについて、ここまでVenusをノックインした株で視床下部神経幹細胞を分化誘導してきた。しかし今後広く用いられるためには遺伝子導入されていない細胞でも分取可能にする必要がある。そこで細胞表面抗原を用いて分取することを試みた。細胞表面抗原スクリーニングキットで検討し、ヒト神経幹細胞で発現するとされるXにてRax::Venus陽性細胞を分取できる事が判明した。しかしX陽性細胞中にRax::Venus陰性細胞も多く混入したため、これを除去するためにYに着目した。Yは成熟ニューロンやグリア細胞に発現し神経幹細胞には発現しないという報告がある。実際にヒトES細胞由来の視床下部オルガノイドをXとYで染色するとX陽性Y陰性細胞がRax::Venus陽性細胞と一致して発現していた。 項目Cについては、マウスES細胞を用いて移植の基本技術を完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
項目Aについては、neurosphereの凍結保存法を改良する。現状で凍結保存が不可能ではないが生存率が低く、この点を改良する。 項目Bについては、マーカー遺伝子などの導入されていないヒトES/iPS細胞で視床下部神経分化を行い、表面抗原にて細胞選別し、視床下部神経幹細胞としての性質を持つかどうか検討する。X陽性Y陰性細胞をセルソーターで分取し浮遊培養を施行、neurosphereを形成させてRax持続陽性細胞の分取率を検討する。充分に陽性率を高める方法を確立した後、次にneurosphere継代によって視床下部神経幹細胞としての性質が維持されるかを確認する。 項目Cの動物移植では、ヒトES/iPS細胞由来Rax持続陽性細胞を、動物モデルの視床下部に移植し、その生着・分化・機能を検討する。すなわちneurosphereがin vivoにても視床下部神経幹細胞の性質を認めるか調べる。重症複合免疫不全 (SCID) マウスの腹側視床下部にRax持続陽性細胞で構成されたneurosphereを移植し1週間後neurosphereがマウス脳内に生着するか、視床下部神経細胞に分化しているかを検討する。可能であれば視床下部機能を失わせたモデルマウスに対しても移植を行い、移植細胞による機能変化を検討する。
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Causes of Carryover |
独立基盤形成支援の一部を次年度使用とした。主として新型コロナ感染症流行が持続しても、研究活動への影響を最小限化する環境整備に用いる。換気を行えない培養室と、出勤人数減少による研究室内の補給能力低下について対策する。その一部は不要品を入手し、再整備して有効活用する。
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[Journal Article] Functional Lactotrophs in Induced Adenohypophysis Differentiated From Human iPS Cells.2022
Author(s)
Miyake N, Nagai T, Suga H, Osuka S, Kasai T, Sakakibara M, Soen M, Ozaki H, Miwata T, Asano T, Kano M, Muraoka A, Nakanishi N, Nakamura T, Goto M, Yasuda Y, Kawaguchi Y, Miyata T, Kobayashi T, Sugiyama M, Onoue T, Hagiwara D, Iwama S, Iwase A, Inoshita N, Arima H, Kajiyama H.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 163
Pages: bqac004
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A new primate model of hypophyseal dysfunction.2021
Author(s)
Kawabata T, Suga H, Takeuchi K, Nagata Y, Sakakibara M, Ushida K, Ozone C, Enomoto A, Kawamoto I, Itagaki I, Tsuchiya H, Arima H, Wakabayashi T.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 24
Pages: 10729
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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