2020 Fiscal Year Research-status Report
肥満の病態形成におけるコレステロールエステル加水分解酵素の役割の解明
Project/Area Number |
20K08870
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
高橋 学 自治医科大学, 医学部, 講師 (70406122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肥満 / コレステロールエステル加水分解酵素 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満や動脈硬化の病態形成にはマクロファージが重要な役割を担っている。中性コレステロールエステル(CE)水解酵素1(NCEH1)はマクロファージに豊富に発現し、脂肪滴に蓄積したCEを加水分解する酵素である。動脈硬化病変において、マクロファージに取り込まれたリポタンパクのコレステロールはアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ1(ACAT1)によりCEとなり細胞質内に脂肪滴を蓄積し、泡沫化病変を形成する。CE水解にはマウスではホルモン感受性リパーゼ(HSL)とNCEH1とが同等に関与している。NCEH1を全身性に欠損しても骨髄細胞特異的に欠損してもマクロファージ泡沫化促進により、マウスの動脈硬化病変が悪化する。さらにHSLの欠損により相乗的に増悪する。一方、高脂肪食で飼育し形成された肥満(DIO)では白色脂肪組織(WAT)にマクロファージが動員され、adipose tissue macrophage(ATM)としてWATの慢性炎症や全身のインスリン抵抗性の形成に重要な役割を果たしている。骨髄系細胞特異的にコレステロールのエステル化に関わるACAT1を欠損したマウスのDIOにおいてATMの減少・耐糖能の改善・体重増加抑制が報告されており、マクロファージ泡沫化の肥満病態への関与が推測される。予備検討において、NCEH1欠損マウスはDIOに抵抗性で、WATのATMが減少していることを見出した。本年度はNCEH1欠損マウスのDIOを作成し、NCEH1の肥満病態における関わりについて、体重増加や白色脂肪組織の組織学的・遺伝子発現解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
動物飼育施設が移転したためマウスの繁殖から開始した。COVID19の影響により実験に遅延を生じている。高脂肪食負荷を開始し、これまでの結果では、予備検討で得られたNCEH1欠損マウスの体重増加抑制がみられていない。今後さらにデータを蓄積していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食負荷による肥満誘導モデルのデータを蓄積すると同時に、白色脂肪組織の組織学的・遺伝子発現解析を進めていく。また体重増加に関して、先天性肥満モデルであるob/obマウスと交配し、肥満モデルマウスにおいても検討を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
動物飼育施設が移転しマウスの繁殖から開始したことや、COVID19の影響で実験に遅延が生じたために次年度使用額が生じた。血液サンプルの糖脂質代謝関連項目の測定、脂肪や肝臓の組織学的解析および遺伝子発現解析、そして肥満誘導のための高脂肪食、マウス飼育費用等に使用する予定である。
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