2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K08900
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
柳田 圭介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (00583882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / アラキドン酸 / 多価不飽和脂肪酸 / 脳機能障害 / リピドミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸(ARA) などの多価不飽和脂肪酸は食事からの摂取が必要な必須脂肪酸であり、主に生体膜中のリン脂質に存在する。 特にDHAやARAは脳に豊富で、その機能に極めて重要である。しかし、その脳内輸送や分子形態を含む代謝の経路、その生理的意義などについてはほとんどわかっていない。 本研究は、血管から脳実質に取り込まれたDHAやARAなどの必須脂肪酸の脳内時空間的代謝経路を明らかにすることを目的とする。脳内DHA/ARAの低下は様々な脳機能障害に認められており、本研究の成果によりその欠乏や輸送異常による脳機能障害の分子基盤の解明につながることが期待される。 昨年度の重水素ラベルリゾホスファチジルコリン(LPC)を用いた実験により、脳血管内皮細胞に取り込まれたLPCはリゾリン脂質アシル転移酵素(LPLAT)などによりホスファチジルコリン(PC)に代謝されることを見出していた。本年度はさらに解析を進め、既知のLPLATとは 非依存的にLPCに脂肪酸が付加される経路も存在すること、PCが合成された後そのコリンがスフィンゴミエリン(SM)へ酵素的に移行することを見出した。また、昨年同定された非血管性の主要なLPC取り込み細胞Xについては、RNAシークエンスの結果より脳内線維芽細胞であることを明らかにした。さらにLPCトランスポーター欠損マウスを用いた実験により、LPC以外の形態で脳実質に運ばれる新規脳内脂肪酸移行経路の存在を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、脳血管内皮細胞に取り込まれたリゾホスファチジルコリン(LPC)がそのまま脳実質細胞に輸送される可能性が考えられていた。しかしながら、昨年度および本年度の研究成果により、脳血管内皮細胞に取り込まれたLPCは既知のリゾリン脂質アシル転移酵素(LPLAT)や新規経路によりホスファチジルコリン(PC)に代謝されること、さらにPCのコリンがスフィンゴミエリン(SM)へ酵素的に移行することが明らかとなった。これらの結果は、複数のリゾリン脂質アシル転移酵素(LPLAT)やSM合成酵素、LPCトランスポーターMFSD2Aの欠損マウスを用いて示されたものであり、上記の血管内皮細胞リン脂質代謝が酵素的に進むことを遺伝学的に証明している。また、血管内皮細胞の他にも脳内線維芽細胞がLPCをMFSD2A非依存的に取り込むことも明らかとなった。さらに、MFSD2A非依存的に脂肪酸を脳実質に運ぶ新規脳内脂肪酸輸送経路の存在が示唆されており、脳へのまた脳内での脂肪酸供給/輸送経路解明に向けた研究が着実に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をもとに、まずリゾホスファチジルコリン(LPC)トランスポーターMFSD2Aにより取り込まれたLPCがホスファチジルコリン(PC)へと代謝される経路の詳細について検証する。具体的には既知のリゾリン脂質アシル転移酵素(LPLAT)に非依存的なLPCへの脂肪酸付加に関わる酵素の同定を試みる。またLPCからPCへと代謝されるその意義について、これまで考えられてきた脳への脂肪酸送達とは異なった意義があると考えられる。その真の生理的意義について、MFSD2A欠損マウスやスフィンゴミエリン合成酵素欠損マウス等を用いて追求する。さらに、これまでの研究で示唆されたMFSD2A非依存的な脳への脂肪酸輸送経路について、重水素ラベル脂肪酸を含有する各種脂質形態や重水を用いたマウス体内での脂肪酸重水ラベル化により解明を目指す。
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[Journal Article] Sphingosine‐1‐phosphate promotes tumor development and liver fibrosis in mouse model of congestive hepatopathy2021
Author(s)
Kawai H, Osawa Y, Matsuda M, Tsunoda T, Yanagida K, Hishikawa D, Okawara M, Sakamoto Y, Shimagaki T, Tsutsui Y, Yoshida Y, Yoshikawa S, Hashi K, Doi H, Mori T, Yamazoe T, Yoshio S, Sugiyama M, Okuzaki D, Komatsu H, Inui A, Tamura-Nakano M, Oyama C, Shindou H, Kusano H, Kage M, Ikegami T, Yanaga K, Kanto T
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Journal Title
Hepatology
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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