2020 Fiscal Year Research-status Report
日本人2型糖尿病感受性遺伝子GCN2が膵β細胞機能に及ぼす影響に関する検討
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20K08906
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 真希 (小柳真希) 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (40623690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木戸 良明 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10335440)
堀 裕一 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (80248004)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵β細胞機能 / GCN2 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病の発症・進展には、膵β細胞量調節機構の異常のみならず、膵β細胞の質的異常も大きく関与している。特に、2型糖尿病患者のインスリン分泌能は低下に陥る前の段階で一時的に分泌亢進を認めることが知られている。本研究ではGCN2の機能不全が膵β細胞のインスリン分泌能に与える影響について各種実験を通して解明するために、βGCN2-/-マウスにおけるインスリン分泌能の経時的な変化を確認することが目的である。 ヒト被験者におけるT2DMに関連するGCN2のSNP多型と代謝パラメータとの関係を評価し、リスク対立遺伝子を有する被験者では75gOGTT試験ならびにインスリンクランプ試験にてインスリン分泌が減少していることを見出した。 次に、全身性GCN2ノックアウトマウスに高脂肪負荷を行った際に、耐糖能異常および膵β細胞量減少をきたすことを確認した。そこで、膵β細胞特異的GCN2欠損マウス(βGCN2-/-マウス)を用いてインスリン分泌能を評価したところ、高脂肪食負荷後の耐糖能異常および膵β細胞量減少を認めた。この現象には、GCN2欠損によるmTORC1活性亢進およびインスリンシグナルの低下が関係していることが示唆された。そこで、GCN2の下流に存在するeIF2αのリン酸化と蛋白翻訳の低下、ATF4の選択的な翻訳促進が報告されているため、高脂肪食負荷全身性GCN2ノックアウトマウスの膵島およびGCN2ノックダウンINS-1細胞のイミュノブロット解析によりATF4の発現低下を確認した。加えてATF4ノックダウンINS-1細胞においてmTORC1活性の亢進とインスリンシグナルの低下を認め、その過程にSestrin2の発現低下が関係していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
βGCN2-/-マウスにおけるインスリン分泌能についての解析、および、培養細胞を用いたSestrin2の関与に関する検討について概ね明らかにすることができている。加えて、Sestrin2はmTORC1活性亢進に伴う膵β細胞不全において、治療標的分子となることが示唆 されるため、培養細胞を用いた実験においてSestrin2のノックダウンによって、膵β細胞株のmTORC1活性が亢進すること、および、GCN2ノックダウン培養膵β細胞にSestrin2の発現ベクターを導入することにより、mTORC1シグナルの過剰亢進が是正されることまでは確認できている。以上より、当初の計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの検討で、高脂肪食下に2型糖尿病感受性遺伝子GCN2はATF4やSestrin2の発現低下を介してmTORC1活性を亢進させ、インスリンシグナルの低下を導き、膵β細胞量を減少させる可能性が示唆された。この膵β細胞量調節機構をさらに解析すべく、タンパク質分解処理機構であるautophagy(自食作用)について着目する予定である。autophagyがmTORC1活性によって制御されることはよく知られている。以上より、インスリンシグナルとautophagyの相互作用により膵β細胞機能に大きく関与している可能性がある。そこで、2型糖尿病モデルと考えているβGCN2-/-マウスにおいても、同様にautophagyの障害が認められるか確認を行う。分解されるタンパクとオートファゴソームを繋ぐアダプタータンパクであるp62/SQSTM1やLC3Bの単離膵島を用いた免疫染色、オートファゴソームマーカーであるLC3-Ⅱのwestern blot法による定量、p62の変化および選択的autophagyのプロセスに必要とされているp62のリン酸化についても解析する。mitophagyの障害はミトコンドリア機能低下を介してインスリン分泌障害を招くことから、電子顕微鏡を用いたGCN2-/-マウスの単離膵島におけるミトコンドリア数・形態を評価する。GCN2ノックダウン培養膵β細胞の免疫染色により、ミトコンドリアと酸化タンパク(ニトロチロシン抗体などで標識)の局在評価も可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
物品費として端数が生じたため、次年度の試薬代に充てる。
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