2021 Fiscal Year Research-status Report
糖代謝関連臓器における生体内オートファジーフラックスの病態生理学的意義の検討
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20K08917
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西田 友哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10581449)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / 糖尿病 / 膵β細胞 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究に引き続き、オートファジーフラックスを定量可能なモニターマウスであるpHluorin-LC3-mCherryマウスを用いて、糖代謝の中心的な役割を担う膵内分泌細胞に着目した解析を実施した。 これまでの解析により、インスリン受容体拮抗薬投与によるインスリン抵抗性増大時においては、膵β細胞を中心とする膵島においてオートファジーフラックスが不均一化、すなわちオートファジーフラックスが増大した細胞群と低下した細胞群が存在することを見出していた。まず、それらの機能的な相違を明らかにするために、グルコース刺激時の細胞内Ca濃度の変化をCa指示薬により検討した。その結果、オートファジーフラックスが増大した膵β細胞では細胞内Ca濃度の上昇が良好であった。一方で、オートファジー制御因子であるAtg7をノックダウンした膵β細胞では、その上昇が抑制されており、オートファジー活性が直接的に膵β細胞機能を制御している可能性が考えられた。 次に、その制御機構を検討するため、質量分析により細胞内タンパク量の定量評価を試みたところ、オートファジーフラックスが増大した細胞群では、低下した細胞群に比べて細胞内輸送に関連した多くのタンパク量が変化していることが明らかになった。 最後に、膵島のオートファジーフラックスを生体内で評価するという目標を達成するため、2光子顕微鏡を用いた生体マウスでの膵島の直接観察を試みた。アデノ随伴ウイルスベクターを用いて、膵β細胞特異的にtagBFPを発現させ、全身麻酔下にマウスを開腹し膵臓を体外に露出し、膵島の直接観察を行った。麻酔下での飢餓刺激や、グルコースの経静脈投与ではモニタープローブの明らかな変化は観察されなかったものの、膵島のin vivoでの観察が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pHluorin-LC3-mCherryマウスの作製と、それを用いたオートファジーフラックス評価における妥当性を検証することができた。また、当初の目標であった、骨格筋や肝臓、膵β細胞などの糖代謝関連臓器におけるオートファジーフラックスの評価をほぼ終えた。 さらに、膵β細胞に関する検討においては、インスリン抵抗性誘導下においてオートファジーフラックスの違いが持つ機能的な意義や、遺伝子発現・タンパク発現量の相違などを網羅的に解析し、新たな知見を得た。 最後に、2光子顕微鏡によるin vivoでの評価も試み、新たな評価系の作成についても見通しが得られた。 これらの結果から、本研究課題の進捗に関しては概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究課題の結果に基づいて論文作成を完了し、その発表により成果を広く世界に発信する。 膵β細胞のオートファジーフラックスが持つ機能的な意義は今回初めて明らかにされたものの、その制御機構の詳細に関しては今回の検討でも未解明であった。 今後は、(1)オートファジー機構が膵β細胞においてインスリン分泌に影響するメカニズムは何か(2)オートファジーにより分解を受ける膵β細胞の基質は何か、に着目して研究を進める。さらに、2光子顕微鏡による膵β細胞の直接的な観察は、生体内での内分泌細胞の挙動を知る上で有力なツールと考えられるため、さらに予備的な検討を進める予定である。
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Research Products
(4 results)