2021 Fiscal Year Research-status Report
膵島ホルモン分泌細胞の代謝特性の解析と偽膵島作製による代謝・分泌障害機構の解明
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20K08918
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石原 寿光 日本大学, 医学部, 教授 (60361086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小須田 南 日本大学, 医学部, 助手 (40811609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インスリン分泌 / グルカゴン分泌 / 遺伝子発現修飾 / 偽膵島 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリン分泌細胞において、遺伝子発現抑制や過剰発現を、比較的容易に効率的に行うシステムを構築してきたが、細部を改善し論文として発表することができた。shRNA発現による遺伝子発現抑制が十分に起こらない遺伝子に関しては、遺伝子そのものを破壊することも必要となったが、Crispr/Cas9法を用いることにより、可能とした。 これらによって、引き起こされるインスリン分泌細胞でのグルコースやアミノ酸、脂肪酸代謝の変化がインスリン分泌細胞の生存やグルコース応答性のインスリン分泌にどのように影響するかを検討している。これらの解析のために、放射性同位元素14Cおよび3Hで標識されたグルコースを用いる代謝流量の測定は、解析の初期に代謝変化の大きな流れを把握するのに重要である。さらに、この1年間で、LC-MS/MS法によって、細胞抽出液中の代謝産物の測定系を確立した。ミトコンドリア代謝産物などを測定することにより、ミトコンドリア代謝によって生じるどの代謝産物が重要であるか、一定の見解に達しつつある。また安定同位元素13Cで標識されたグルコースを用いる実験の準備を行っている。 一方、インスリン分泌細胞とグルカゴン分泌細胞を用いた偽膵島作製による実験も進行し、両者の混合比率を変えた場合の、偽膵島の状態の解析を行った。興味深いことに、偽膵島は、線維芽細胞との混合培養では作製できないことも分かった。グルコースによるインスリン分泌は、グルカゴン分泌細胞を共存させることにより、全体として増強されることが分かった。今後、遺伝子発現修飾を施したインスリン分泌細胞を用いて、偽膵島を作製し検討する。ただし、偽膵島にした場合に、発現誘導の効率が落ちるなどの問題点も見出されてきた。適切な対応策を講じるめどは、たっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア代謝関連の酵素や輸送担体の発現修飾は、順調に進んでいる。また、細胞における遺伝子ノックアウトも効率よくできるように改善させた。さらに、遺伝子発現修飾を行った場合の、様々な変化が二次的影響である可能性を検証する方法を考案中である。これまでに、5個ほどの遺伝子発現修飾により、インスリン分泌の変化と平行して変化するミトコンドリア代謝産物を同定できたので、これが真に因果関係を持つものなのか、偶然に変化の方向が同一になったのかを、別の遺伝子の発現修飾を行って検証中である。平行して、接着培養細胞系での潅流実験によるインスリン分泌動態を測定する実験系を確立した。インスリン分泌は二つの相に分かれて起こることが知られており、第一相目と二相目の代謝依存様式が異なると考えられているため、このように分離して検討できることの意義は小さくない。 グルカゴン分泌細胞株において、インスリン分泌細胞と同様に遺伝子発現修飾を効率的にする改変を行い、現在その効果を検討中である。グルカゴン分泌細胞自体のグルコース応答能があまりよくないので、この点を改善させることも検討している。 偽膵島の作製も安定してできるようになったが、偽膵島と本来の膵島は大きな違いもあることが、明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコース代謝、脂肪酸代謝、アミノ酸代謝など中心代謝過程の酵素や膜輸送担体の遺伝子発現を修飾することによる細胞応答変化を、さらに詳細に解析していく。複数の独立していると思われる経路がインスリン分泌動態に変化を与えているという結果を得つつあるが、それぞれに解析を進めた後、それらを統合できるようにしたいと考えている。 遺伝子発現修飾、特にshRNAによる遺伝子発現抑制では、タンパクレベルが十分低下するのに5日以上を有する場合がある。このような場合には、この間での遺伝子発現抑制が2次的変化を細胞に及ぼす可能性が考えられる。そのために、結果の解釈がやや難しくなる。そこで今後、目的遺伝子をノックアウトした細胞にタンパク質分解シグナル(degron)を付加したタンパクを発現させておき、薬剤誘導的にタンパク発現抑制状態を作って解析することで、現在得られている結果を検証したいと考えている。 さらに13C標識グルコースなどを用いた代謝フラックスの解析も加えていく。インスリン分泌細胞とグルカゴン分泌細胞の遺伝子発現修飾がほぼ効率よくできるようになり、平行して偽膵島の作製と解析も可能となったので、インスリン分泌細胞とグルカゴン分泌細胞の相互連関の分子生物学的解析を進めていく。
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[Journal Article] Aortic arch calcification with pericardial fat mass detected on a single chest X-ray image is closely associated with the predictive variables of future cardiovascular disease2022
Author(s)
Watanabe K, Hada Y, Ishii K, Nagaoka K, Takase K, Kameda W, Susa S, Saigusa T, Egashira F, Ishihara H, Ishizawa K.
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Journal Title
Heart Vessels
Volume: 37
Pages: 654-664
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Impact of plasma xanthine oxidoreductase activity on the mechanisms of distal symmetric polyneuropathy development in patients with type 2 diabetes2021
Author(s)
Fujishiro M, Ishihara H, Ogawa K, Murase T, Nakamura T, Watanabe K, Sakoda H, Ono H, Yamamotoya T, Nakatsu Y, Asano T, Kushiyama A.
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Journal Title
Biomedicines
Volume: 9
Pages: 1052
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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