2022 Fiscal Year Annual Research Report
ステロイド産生細胞における環状構造RNAの意義の解明
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20K08922
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田中 智子 福岡大学, 医学部, 講師 (10380528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 賢治 福岡大学, 薬学部, 教授 (30419527)
田邉 真紀人 福岡大学, 医学部, 准教授 (60707305) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 副腎腫瘍 / 環状RNA / RNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のRNA-seqデータによる環状RNA(circRNA)の解析から、ヒト成人組織に発現するcircRNAのうち一定の割合のcircRNA(11.9%、37.0-50.0%)が組織特異的に発現することが報告されている。また、circRNAの発現は、成人組織よりも胎児組織で、また、腺組織でより多いとされ、副腎では2311個のcircRNAが発見・報告されている。circRNAの機能としては、RNA結合タンパク質やマイクロRNAと結合し、あるいは自身がコードするタンパクを発現して、組織の発生や分化を制御していると考えられている。また、環状構造のRNAは構造的に安定であるため、バイオマーカーとしても注目されている。 私達はこれまでに、副腎皮質の発生・分化に不可欠でステロイド産生を調節する核内受容体であるNuclear receptor 5A1 (NR5A1)が、非従来型スプライシングによって非定型circRNAを形成できることを示した。このcircRNAは、Inositol requiring element-1α(IRE1α)の切断部位を持つふたつのステムループがIRE1αの切断部位で連結されて形成されるためcircIRE RNAと名付けた。circIRE NR5A1は正常副腎皮質でのみ検出され、副腎皮質癌細胞株では検出されなかった。さらに、circIRE NR5A1は、IRE1αの発現量とIRE1阻害剤1であるSTF-083010に応答した。IRE1αはXBP1のスプライシングを変化させずにNR5A1の発現を誘導し、NR5A1関連のステロイド生成ネットワークがXBP1ではなくIRE1αによって誘導されることが示唆された。本研究では、正常副腎組織と副腎腫瘍とで、環状RNAの種類や発現量にどのような差異があり、病態とどのように関わっているのかを明らかにするため、ロングリードシークエンスを行い、環状RNAの解析を進めている。
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